2018 Fiscal Year Annual Research Report
新口動物の中腸領域における機能・形態の分子的背景と進化機序
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17J06306
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中山 理 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 消化管 / 中腸領域 / 消化機能 / 吸収機能 / 遺伝子発現 / 新口無脊椎動物 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
新口動物の消化管の中でも中腸領域には多様な構造・器官が存在し、消化や吸収等の消化管の基本的機能が担われている。本研究では、脊索動物の中腸領域の機能とそれを担う形態について新口無脊椎動物である尾索類ホヤや頭索類ナメクジウオに着目し、その中腸領域の機能・形態の分子的背景を明らかにし、その進化機序の解明を目指す。2018年度は、(1)尾索類カタユウレイボヤ吸収機能遺伝子の発現解析、(2)カタユウレイボヤPdx機能解析、(3)頭索類ナメクジウオ消化管関連遺伝子群の発現解析を行った。 (1)について、前年度に発現解析を行った吸収機能遺伝子群について、本年度はさらに消化・免疫・粘液関連遺伝子との比較発現解析を行い以下の点を明らかにした。(i)胃では吸収機能遺伝子群と消化機能遺伝子の両者が発現し、部分的に発現が重複する。(ii)免疫関連遺伝子は吸収機能遺伝子と同所的に発現する。(iii)粘液関連遺伝子Mucinは吸収機能遺伝子と相補的な発現パターンを示す。これらの遺伝子群は吸収機能遺伝子群の発現を基盤とし協調的な機能的領域性を構成することが明らかとなった。 (2)について、昨年度は消化酵素遺伝子群の発現を明らかにしたことから、本年度は吸収機能遺伝子の発現解析を行い、アミノペプチダーゼ遺伝子が中腸付近で発現することを見出した。 (3)について、ゲノム編集技術TALENによるPdxのノックアウトを行った結果、予想と異なりPdxノックアウト個体の胃の形態には目立った異常はなく、また消化酵素遺伝子の発現も維持されていた。一方、Ptf1aのノックアウト個体では消化酵素遺伝子の発現は減衰・喪失したことから、当初PdxとPtf1aは同じシグナルカスケード上にあると考えていたが、両者は独立したシグナルカスケード上に存在する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尾索類における発現解析によりその消化管における機能的領域性を明らかにすることができた。加えて、ゲノム編集TALENを用いたPdxさらにPtf1aの機能解析を行うことができ、そのノックアウト個体を用いた遺伝子発現解析に着手できた。今後、このノックアウト個体を用いた遺伝子発現解析を進めていけば、次年度には中腸領域におけるこれらの転写因子群の役割について知見が得られると考えられ、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、発現解析によって得られた機能的領域性に関する知見をもとに、機能解析を中心に実験を進める。当初の予定のPdxの機能解析に加えて、Ptf1aについてもノックアウト実験を進める。そのノックアウト実験により得られたノックアウト個体を用いて消化機能・吸収機能に関連する遺伝子のin situハイブリダイゼーションによる発現解析を行い、発現パターンに変化が見られるか解析していく。そして、これまでの発現解析および機能解析における知見を統合し中腸領域の進化シナリオの構築を目指す。
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