2018 Fiscal Year Annual Research Report
基質の硬さに応答する新たな転写因子ATF5によるがん悪性化メカニズム
Project/Area Number |
17J06406
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
温田 晃弘 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / がん細胞 / ATF5 / 細胞骨格 / 基質の硬さ / 転写因子 / メカノセンス / すい臓がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,今年度において期待ほどではないがある程度,研究を進展させた.本研究の2年目の目的である「ATF5の核局在を制御する上流遺伝子の探索」に対して,当研究室の約30種類の阻害剤を用いて実験をおこなった.硬い基質上のすい臓がん細胞株AsPC-1細胞に対して,各々の阻害剤を投与して,ATF5の局在を免疫蛍光染色で観察した.その結果,ほとんどの阻害剤はATF5の局在に影響を与えなかったが,アクチン線維およびミオシンなどの細胞骨格阻害剤がATF5の局在に影響を与えることを見出した.アクチン線維阻害剤はATF5の核局在を減少させ,ミオシン阻害剤はATF5の核局在を亢進させた.この結果より,硬い基質上においてアクチン細胞骨格がATF5の核局在を制御することがわかった.しかしながら,siRNAスクリーニングなどによるゲノムワイドな遺伝子スクリーニングは行えていない.そのため,未知の上流遺伝子の探索が課題として残っている.そこで,今後はゲノムワイドsiRNAスクリーンングを用いて,ATF5の局在を制御するシグナル伝達を同定する予定である. 上記に加えて今年度は,細胞の核の大きさがATF5の核局在へ影響を与えることを示唆するデータも取得している.硬い基質上では細胞の核の面積が大きいのに対して,軟らかい基質上では核の面積が小さい.さらに,アクチン阻害剤を使用した際は核の面積が小さくなり,ATF5の核局在が低下した.一方で,ミオシン阻害剤を使用した際は,核の面積が大きくなり,ATF5の核局在が亢進した.これらより,核の面積とATF5の核局在に相関がある可能性がある.そこで,本年度では核の面積とATF5の核局在の関係性についても検討していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は研究実施計画を全て達成できていないためである.しかし,硬い基質上の細胞において,アクチンおよびミオシンがATF5の核局在を制御させることを見出した意義は大きい.そのため,「やや遅れている」という区分とした.研究実施計画が遅れている理由としては,多数の阻害剤などを使用してATF5の局在を観察する系の構築に時間が掛かっているからである. 現在は,一先ず研究室で保有している阻害剤やsiRNAを投与して1つ1つ観察しているが,今後は多数のサンプルを観察する系を構築して,研究を進展させていく.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度に着手できなかったゲノムワイドスクリーニングによるATF5の上流遺伝子の探索を行う.これにより,新たな上流遺伝子を同定する予定である. また、3年目の予定である「ATF5の下流遺伝子の同定」にも着手する.具体的には,硬い基質上のATF5を減少させた際のmRNAの変化を,mRNAマイクロアレイなどにより網羅的に解析する.これにより,硬い基質上でATF5を介したがん悪性化に関与する遺伝子を同定する.
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Research Products
(3 results)