2017 Fiscal Year Annual Research Report
非正規教員の任用実態に関する実証研究―任用プロセスとその特質に着目して―
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17J06426
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原北 祥悟 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 非正規教員 / 人事制度 / 制度変化 / 地方分権改革 / アイディアの政治 / 非正規雇用 / 学校組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
非正規教員の人事制度をめぐる問題は、地方分権・規制緩和政策や中央・地方の逼迫する財政状況、学級崩壊や不登校問題、さらには学力低下論議等に端を欲する少人数学級やTTといった学級編制への国民の関心などが極めて複雑に絡み合う教育界の大状況を検討するだけでは解決は難しく、「非正規問題」が教育界にとどまらない現代社会の課題であることも踏まえると、社会制度全体との関係の中で捉えることが求められる。 本年度は、2001年に改正した「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(以下、義務標準法)の改正過程に焦点を当て、なぜ非常勤講師の「活用」が制度化されたのかについて検討した。その際、「教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議」議事要旨、第151回国会文部科学委員会議事録に加えて、80-90年代の社会動向を踏まえ考察を行った。なお、本制度に着目した理由は、非常勤講師の「活用」が明文化されたという点において、非正規教員の拡大過程における一つの大きなエポックとなっているためである。 非常勤講師「活用」の制度化は、国・地方の財政難や地方分権改革・行政改革など外部の改革文脈に呼応した結果だけではなく、90年代の教育問題でもある不登校や学級崩壊への対策あるいは、学習指導要領改訂に伴う授業時数の変化に対応するためのアイディアによるものである可能性を指摘した。 また、「教員の非正規化」の遠因として90年代の社会動向(特に財界の動き)を検討している。今後は「社会」と「制度」の関連性の分析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非正規教員の拡大過程における大きなエポックとしての2001年義務標準法改正のプロセスを検討することで、なぜ非正規教員が「活用」されるに至ったのかその経緯を明らかにすることができた。教育制度内部の議論にとどまらず、我が国の社会動向との関連から捉えることは「非正規」を取り扱う本研究において欠かすことのできない視点である。この視点から考察できた点から、自己評価は上記の通りとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は非正規教員「活用」を惹起した制度改正(2001年義務標準法改正)のプロセスを検討することに主軸を置いてきた。そこでは、我が国の社会構造の変化に影響を受けながらも、当時の教育問題(不登校や学級崩壊など)への対応の一環として非正規教員の「活用」が展開されてきた可能性を指摘した。しかしながら、教員の非正規化へと転換した「義務標準法」の改正のみの解明に留まった。 そこで次年度では、非正規教員をさらに拡大させた制度改正として、義務教育費国庫負担制度における総額裁量制導入のプロセスと、その過程における非常勤講師「活用」をめぐる議論の様相を考察する。このような制度的検討と同時に、都道府県・市町村教育委員会(特に人事管理主事)が非正規教員の任用をいかなる認識のもと実施しているのか明らかにする予定である。その方法としては、ヒアリング調査とアンケート調査の二つを検討している。非正規教員の任用に特徴のある自治体へは直接訪問しヒアリング調査を行い、他方で全国的な動向を把握するためにすべての自治体(都道府県・市町村教育委員会)へアンケート調査を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)