2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J06480
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石田 侑矢 九州大学, 法学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 問題解決型司法 / 入口支援 / ホームレス・コート / 公正な裁判を受ける権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、大別して、(1)EU圏における「公正な裁判を受ける権利」(欧州人権規約第6条)に関する諸研究のレビューと(2)ホームレス・コートの現地調査の二つを行った。 まず、(1)については、a) 研究者による最新の諸研究のレビュー、及び、b) 欧州人権裁判所における公正な裁判を受ける権利に関する諸判例をレビューすることで、これを行った。a)では、国内外における研究者による様々な諸文献を収集・分析した。b) については、同権利に関する欧州人権裁判所による諸判例のうち、リーディングケースと呼ばれる諸判例の分析を行った。以上より、公正な裁判を受ける権利については、もっとも議論が進んでいると思われるEU圏においても、未だ発展途上にあることがわかった。 (2)カリフォルニア州サンディエゴにおけるホームレス・コートの現地調査を行った。今回は、アメリカの各地で設置されているホームレス・コートのうち、もっとも基本形であるカリフォルニア州サンディエゴにおけるホームレス・コートを調査対象とした。我が国におけるホームレス・コートに関する先行研究は皆無に等しく、したがって、まずその「原型」を把握しておく必要があると考えたからである。今回は、ホームレス・コートのヒアリングの傍聴と、その一週間前に弁護人と被告人との間で行われる面談に参加した。また、ホームレス・コートにおける各アクター(弁護人、プロバイダー、被告人)に対するインタビュー調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下を理由として、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価できる。 まず、上記(1)により、欧州人権規約第6条における同権利の内実及び射程については、これに関する議論が世界でもっとも進んでいると思われるEU圏においても、なお不明確な部分が多く存在しており、未だ議論は発展途上の段階にあるということを明らかにした。特に、刑事手続における「武器対等原則」に代表される、implied rightsと呼ばれる権利ないし原則(明文規定は欠くが、解釈によって同権利の内容として含まれうるもの)については、基本的部分を除き、未だ議論が収束していない状況にあることがわかった。それにより、現在判例上確定している同権利の内容及び射程を、一定程度明確化することができた。次いで、これまでの諸判例のうち、量刑及びその手続が論点となった事例を収集し、分析した。その結果、欧州人権裁判所の判例上、量刑(に関する論点)が問題とされた事例は、それほど多くなく、欧州人権裁判所においては、同権利と量刑及びその手続との結びつきは、現在のところ、あまり意識されていない状況にあるということがわかった。また、欧州人権規約第6条3項以下の明文化された諸権利についても、判例の集積にバラつきが見られることがわかった。 次に、(2)より、これまで文献上必ずしも明らかでなかった部分を明確化することができた。ホームレス・コートについては、国内における先行研究が皆無であったことから、意義のある調査を行うことができた。この調査結果を、『九大法学』掲載の拙稿に反映させた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究を洗練させた上で、公正な裁判を受ける権利保障としての問題解決型司法を構築することを試みる。特に今後は公正な裁判を受ける権利についての国内の先行研究のレビューを行う。特に量刑との関係に着目してこれを行う。 なお、以上の内容をまとめたものを、学位請求論文として今年度末に提出する予定である。
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Research Products
(5 results)