2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J06497
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神野 莉衣奈 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化ガリウム / 超ワイドバンドギャップ半導体 / ワイドバンドギャップ半導体 / パワーデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、極ワイドバンドギャップ半導体の材料として用いるコランダム構造酸化アルミニウムガリウム (α-(AlxGa1-x)2O3)の高品質化に先がけ、ミストCVD法を用いてコランダム構造酸化ガリウム (α-Ga2O3)の不純物低減および転位密度低減を行った。また、Ga2O3は本研究の研究対象とするα相を含め6つの異なる結晶構造を有し、成長時の結晶構造の制御が近年問題となっており、半導体基板として汎用性の高いサファイア基板上への制御について研究を行った。得られた成果の概要は以下の通りである。 (i)薄膜中の不純物濃度低減を目的に原料を従来用いていたアセチルアセトナートから塩化ガリウム原料へ変更し成長を行った。SIMS分析結果から、主な不純物として懸念されていた炭素不純物濃度を10^19cm-3から検出限界以下(10^17cm-3)まで低減することに成功した。また、成長速度の各種条件依存性から高速成長に適しているHVPE法と同じ反応により成長が行われていることがわかり、成長速度が従来の10倍近くの10μm/hまで増加するに至った。 (ii)薄膜中の転位密度低減を目的にα-Ga2O3の横方向選択成長を試みた。c,a,m面サファイア基板で検討を行い、a面基板を用いた場合にファセット同士の会合に至った。TEM観察から横方向選択成長部での転位密度の低減が観察されたが、薄膜全体としての転位密度低減には至らなかった。 (iii)サファイア基板上にアニール処理を行いステップ-テラス構造を有するα-(AlxGa1-x)2O3バッファ層を導入することで、成長温度によりα相とε相の結晶構造を作り分けることに成功した。低温では形成エネルギーの低いε相が成長し、高温では拡散長が大きいことから二次元的な成長が促されバッファ層と同じ結晶構造のα相が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GaCl3というミストCVD法にとって新しい原料を用いたことでα-Ga2O3の不純物密度を大幅に低減することに成功し高純度化がもたらされた。また、GaCl3を用いることで成長速度が大幅に増加し、高速での成長が必要となる横方向選択成長(ELO)が可能となり、ELOを行うことで転位密度の低減に至った。また、研究を進める中で、α相とε相の両相の成長が得られ、現在Ga2O3の問題の一つとなっているGa2O3の結晶相の制御という問題に対面した。しかし、拡散長や自由エネルギーを鑑みて検討を行った結果、これまでに確立した二次元的な成長モードを利用して、結晶の構造制御を可能とした。当初予期していなかった結果が得られたが、その結果を考察することで多角的な方向から研究成果を示すことになり、5件の国際会議での発表に至った。 一方で、結晶相の制御に関する研究を行ったため、α-(AlxGa1-x)2O3の高品質化に関する研究を大幅に進めることはできなかった。しかし、新しい原料を用いた成長やELOに関する技術はα-Ga2O3の成長において確立したことこから、これに関する研究は今後順調に進めることが出来ると予想している。 以上を踏まえると、当初予定していたα-(AlxGa1-x)2O3の不純物密度および転位密度の低減をx=0のα-Ga2O3において実現し、α-(AlxGa1-x)2O3の高純度化の目途を立てることができおおむね順調に進展している。さらに、結晶相の制御に関する研究において、当初予期していなかった結果を残すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は低コスト・大面積化が可能なミストCVD法を用いてα-(Al,Ga)2O3の高品質化を目指したが、本研究は半導体の限界への挑戦であり実用化の前にまず材料の本質を示す必要があると考える。α-(Al,Ga)2O3を用いた極ワイドバンドギャップ半導体の実現には不純物や欠陥を極限まで低減させる必要があるが、研究を行う中でCVD法では低減できる不純物濃度に限界を感じた。そこで、次年度はMBEを用いたα-(Al,Ga)2O3の成長および電気特性制御を中心に行う予定である。MBEは超高真空下での成長を行うため、基板サイズやコストの面から実用化には向かないが、制御性が非常に高く理想的な成長が可能であるため、材料本来の特性を明らかにするには非常に適した手法である。α-(Al,Ga)2O3が極ワイドバンドギャップ半導体材料となることを示すために、MBEでのα-(Al,Ga)2O3の成長およびドーピングにより電気特性を得る。MBEを所有しており、結晶成長、デバイスの両方において多くの知見を有するコーネル大学のDebdeep Jena教授の元、α-(Al,Ga)2O3の成長および評価を行う。さらに、派遣先の機関ではデバイス作製の技術や設備が整っていることから、Jena教授にご指導いただきデバイスの作製も試みる予定である。 MBEを用いてα-(Al,Ga)2O3を用いた極ワイドバンドギャップ半導体を実現し、この結果から何が電気特性へ悪影響を与えるのか知見を得、実用化に適したミストCVD法への成長に生かしたいと考えている。また、ミストCVD法を用いて塩化物原料によるα-(Al,Ga)2O3の成長はまだ達成できておらず、成長可能領域の条件を平衡反応計算により求める予定である。
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