2017 Fiscal Year Annual Research Report
化合物ライブラリーを利用した新規肺高血圧症治療薬の開発
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17J06512
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒澤 亮 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / 治療薬 / ミトコンドリア機能 / 酸化ストレス / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北大学化合物ライブラリーを利用し発見した、肺動脈性肺高血圧症 (PAH) に有効な新しい化合物celsatramycin (CEL) について更なる研究を進めた。具体的には、まずPAH患者由来の肺動脈平滑筋細胞(PASMC)を用いたin vitroでのCEL刺激実験において、その細胞増殖抑制効果の機序を明らかにした。その機序には、Nrf2活性亢進、HIF1α、NR-κB発現低下が関わっていることが明らかになった。Nrf2活性亢進についてはkeap1の抑制によるものであり、その抗酸化作用が細胞増殖抑制に関わっていることが明らかとなった。HIF1α発現低下によるミトコンドリア機能改善作用も明らかとなり、PAH患者のPASMCの細胞増殖亢進の原因とされるミトコンドリア機能異常を改善する事が明らかとなった。またセラストラマイシンはNFκBを抑制することが既に知られていたが、Bioplexの実験では多くのサイトカイン、ケモカインの抑制が示され、NF-κB抑制による炎症抑制作用が明らかとなった。さらにCELは既に24種類の誘導体が東北大学の研究室に存在するが、最適化研究としてより有効で副作用の少ない誘導体を検討し、CEL-3が最適と判断した。CELを投与したin vivoでの検討では低酸素誘発性肺高血圧マウス、モノクロタリン誘発性肺高血圧ラット、SU5416/hypoxia誘発性肺高血圧ラットにおいて肺高血圧治療効果を認めた。さらに、心エコーや右室のウエスタンブロッティングなどの検討を進めた結果、CELは肺高血圧改善作用のみならず右心不全にも効果的であることが明らかになった。将来的には企業と提携し製品化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺高血圧患者由来肺動脈平滑筋細胞の細胞増殖抑制効果の機序について、HIF1α、NF-κBの発現抑制、Nrf2の発現亢進など、機序に迫ることができた。実際、肺動脈における細胞異常増殖の原因とされる、ミトコンドリア機能異常、炎症、酸化ストレスなどを改善する事が明らかとなり、セラストラマイシンによる細胞増殖抑制のメカニズムが明らかとなった。in vivo試験では、3つの肺高血圧モデル動物での治療効果が認められ、ヒトでの臨床応用が実現する可能性がさらに高まった。去年までに比べかなり研究が進歩したものと思われ、今後はさらに副作用の更なる検討など、臨床応用に向けた準備を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
セラストラマイシンの機序についてはかなりの程度示されたが、過去の文献では直接のターゲットとされるものは今までのところZFC3H1というzinc finger proteinが知られている。そこで、ZFC3H1を用いた実験を行い、直接的な機序について示していきたい。肺高血圧モデル動物を用いた実験では、右室収縮気圧は測定したものの肺高血圧の最も重要な指標である肺動脈圧の測定が困難であったため、この測定を進めていく。最終的には臨床応用を目的としているため、動物レベルで副作用について詳細な実験を進めていく。具体的には、毒性、選択性、溶解性、膜透過性、血中での安定性などを東北大学薬学部、企業と協力して明らかにしていく。さらに臨床応用へとつなげるためセラストラマイシンの安全性の検証を行う。具体的には、動物レベルでの副作用はないか、毒性試験など行い詳細に検討する。将来的には企業と連携し、高血圧症の新規治療薬としての臨床試験、製品化を目指す。
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Research Products
(4 results)