2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J06514
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 翼 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 多変量解析 / 高次元統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
高次元自己共分散行列(多次元データの各成分の時系列相関と成分間の時系列相関の行列)の逆行列の推定問題を考えている。自己共分散行列の逆行列の推定量としては、通常の高次元共分散行列の逆行列の推定問題で考えられている線形縮小推定量とリッジ推定量を組み合わせた形のものを提案した。通常の標本共分散行列と同様に標本自己共分散行列に関しても、サンプルサイズに対してデータの次元が大きくなるほど、標本固有値が真の共分散行列の固有値よりも、より大きく上下にばらつくことは先行研究の結果により示される。さらに、次元がサンプルサイズより大きい場合には標本自己共分散行列の逆行列を求めることはできないことがわかるため、高次元自己共分散行列についても縮小推定量を与えることは妥当と考えられる。また、提案する縮小推定量は、逆行列の縮小推定問題において次元がサンプルサイズよりも大きい場合、標本共分散行列の逆行列を求められないといった線形縮小推定量との問題点と、すべての固有値を同じ方向に縮小してしまうといったリッジ推定量の問題点の両方を克服する形となっている。この推定量はパラメータを3つ含んでいるため、これらをフロベニウス損失関数を最小化するような値として与えた。これらの値は、例えば、リッジ推定量と真の自己共分散行列の積のトレースの期待値など未知の値を多数含んでいる。そのため、これらの期待値の不変推定量や一致推定量を求める必要があるが、現在はこれらを評価している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は当初、研究方法として、MP 方程式なる公式を時系列相関をもつ場合に拡張すると計画した。MP 方程式は、通常の標本共分散行列の固有値のもつ漸近的性質を示すために、ランダム行列理論に基づいて導出された公式である。しかし、申請者はこの研究方針では、数カ月を要しても、時系列相関が存在する場合に適用可能な形としてランダム行列理論に基づいた数理的理論結果を得ることができず、パラメータの推定量を求めることができなかったため、研究の進捗状況が遅れてしまった。しかし、推定精度の高い高次元自己共分散行列を求める際に、ランダム行列理論の使用が必須であるわけではないため、通常の縮小推定の研究で行われる手法を使って研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
8.現在までの進捗状況で述べたように推定精度の高い高次元自己共分散行列を求める際に、ランダム行列理論の使用が必須ではなく、通常の縮小推定の研究で行われる手法を使うことができる。提案する推定量に含まれるパラメータは未知の値を多数含んでいる。そこで、正規分布の仮定を置くことで、これら未知の値の漸近展開による近似値のモーメントを評価することで、そのため、パラメータの不変推定量や一致推定量を求めることができると考えられ、現在もこの方針で研究を行っている。 最後に、提案手法の数値的パフォーマンスを他の推定量と比較する。特に、次元とサンプル数の大小関係の度合に応じて、推定量の優劣がどのように変化するかを評価する。また、資産価格の自己相関リスク、および、資産価格間の相互相関リスクを考慮した平均・分散アプローチを、日経平均株価を構成する 225 銘柄の株式のポートフォリオ選択に適用し、運用リスクとリターンの比であるシャープレシオの観点から、提案手法の有用性を示すことを計画している。
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