2017 Fiscal Year Annual Research Report
インド・太平洋におけるカタクチイワシ亜科魚類の系統分類および生態学的研究
Project/Area Number |
17J06652
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
畑 晴陵 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | インドアイノコイワシ属 / タイワンアイノコイワシ属 / カタクチイワシ亜科 |
Outline of Annual Research Achievements |
インド・太平洋に分布するカタクチイワシ亜科魚類の系統学的研究をおこなった.その前段階として,対象分類群(インドアイノコイワシ,タイワンアイノコイワシ,カタクチイワシ各属)の分類学的研究を行った.各種の形態的特徴を把握するためには,分布域広域から得られた各属魚類の標本の観察をおこなう必要がある,国内外の博物館等の研究機関に所蔵されている標本を用いて観察をおこなった.また,分類学的研究に際しては研究対象分類群各名義種のタイプ標本の観察を網羅的におこない,各名義種の分類学的位置づけを確認することも不可欠であるが,多くの研究機関において,タイプ標本は門外不出が原則となっているため,研究者本人が研究機関現地に赴き,これら所蔵標本の観察を行った.さらに,東南アジアや南日本などにおいて採集に与し,新たな標本の確保,生鮮時の色彩に関する情報の収集(カタクチイワシ亜科を含むニシン目魚類は色彩に乏しいとされがちであるが,一部の種においては色彩も重要な識別形質となることが明らかとなりつつあるため),遺伝解析用の切片の採集,生態学的情報の蓄積をおこなった.こうして新たに得られた切片を用い,共同研究者との連携の下,遺伝学的解析をおこなった.こうして従来知られていたよりもカタクチイワシ亜科魚類に多数の種の存在を明らかとした.さらに,遺伝学的解析により,従来よりも詳細に示された種間関係・属間関係を検証するため,再び形態学的観察を内部形態も含めた観察を通じ,初期段階よりも多角的な視点からおこなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究対象分類群の担名タイプ標本の観察を概ね全て完了し,各名義種の分類学的位置づけが明瞭なものとなった.また,分布域を網羅する形で広域から得られた多数の一般標本の形態学的観察から,各種の詳細な形態的特徴や種内変異,生態等が詳らかとなったほか,多数の隠蔽種,未記載種の存在が明らかとなった.特に,カタクチイワシ亜科の中でもインドアイノコイワシ属に関しては種単位での分類学的研究に大幅な進展が見られた.本研究の開始以前には19有効種が認められていたインドアイノコイワシ属魚類は,形態学的観察の他,後述の遺伝学的解析の結果から,本研究によって30以上の種が存在することが観察された.これらの存在に関しては1新種を類似種の再記載とともに既に記載をおこなったほか,学会等において発表をおこなった.今後,さらに記載を行い,随時論文として出版する予定である.既知種においても従来知られていたものよりも遙かに詳細な形態学的情報が得られたほか,分布域や生態に関する詳細が明らかになるなど,発見が多かった.分類学的研究に関しては,標本の形態学的観察のみならず,共同研究者とともに遺伝学的解析を行った.解析の結果は形態観察の結果と概ね一致するものであったが,さらなる隠蔽種の存在を示唆するものであり,より一層の分類学的研究の必要を訴求するものであった.また,遺伝学的解析により各種の種間関係,属関関係が明らかとなり,2年次に展開する系統学的研究の礎となる知見が多数得られた.系統学的研究に関しては,こうした遺伝学的解析からくみ上げられた種間・属関関係が形態にどのように反映されるのか,再び形態学的視点に立ち戻っての観察をおこなった.初期段階で行った外部形態の観察のみならず,内部形態,特に骨格の観察を重ね,各属の単系統性を支持する形質,各種の種間関係や極性決定の要となる形質が見いだされつつある.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の展開としては,進捗状況に記したとおり,これまで得られた種分類の研究成果の出版が急がれる.多数の新種を記載し,既知種,未記載種ともにそれぞれの正確な姿を明らかにすることで,後述の系統学的研究における考察をより情報豊かなものにするためである.系統学的研究に関しては,さらなる形態観察を重ね,遺伝学的系統解析と合致する様な形態的特徴を見いだし,カタクチイワシ亜科において原始的・派生的の種間関係,各形質における極性決定形質の有効性を検討する.さらに,各種の観察の過程で蓄積されてきた生態学的情報や,地理学的情報(各地の水温や塩分,栄養塩・プランクトンの多さなどの環境情報,当該地域が大陸移動や海面高度の変化によりどのような環境変化を経てきたのかなど)から,現状の形質の獲得や分布域の形成はどのような要因が影響し,どのような過程を経てきたのかを考察する.
|
Research Products
(38 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] An annotated checklist of fishes of Amami-oshima Island, the Ryukyu Islands, Japan2018
Author(s)
Masanori Nakae, Hiroyuki Motomura, Kiyoshi Hagiwara, Hiroshi Senou, Keita Koeda, Tomohiro Yoshida, Satokuni Tashiro, Byeol Jeong, Harutaka Hata, Yoshino Fukui, Kyoji Fujiwara, Takeshi Yamakawa, Masahiro Aizawa, Gento Shinohara and Keiichi Matsuura
-
Journal Title
Memoirs of National Museum of Natural Science, Tokyo
Volume: 52
Pages: 1, 157
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-