2017 Fiscal Year Annual Research Report
自己駆動粒子系の定常状態におけるマクロな性質の解明
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17J06659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 愛理 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | アクティブマター / 自己駆動粒子 / コロイド / 力学系 / カオス / ゆらぎ / 集団運動 / 非平衡統計力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギーを散逸させながら自ら動く粒子「自己駆動粒子」の定常状態の性質を調べる目的で実験と数値計算をおこなった.粒子自体が対称性をもち,剛体回転を伴わずに駆動方向を変えられる点から,電場によってコロイド粒子が回転する現象により駆動するクインケ粒子を用いた.交流下の場合について印加電圧の周期で往復運動をしながら正味一方向に進むという未解明の実験挙動が観察されていた.まず,印加電圧に直流オフセットがのっている可能性を完全に排除した希薄系での実験をおこなった.1粒子は粒子・電極表面の不均一性によって普遍性のない推進方向の変化をともなうものの,速さにおいては半周期ごとに速い・遅いといった時間反転非対称性がでることを確認した.また,希薄系下2粒子系の重心の運動は1粒子系に比べて,往復運動の振幅は大きいが,正味の運動速度は小さいことが実験的にわかった. つぎに,1次元系で交流下のモデルをたて1粒子のダイナミクスを数値的に解いた.粒子が駆動するほとんどの周波数帯で,1粒子は周期的に非対称な変位をもって往復運動することで定常的な正味の速度をもち,力学的にはリミットサイクルとなっていることがわかった.その正味の速度の周波数依存性は複雑な構造をもつ.周波数によっては,準周期解やカオスが現れることを確認した.なお,クインケ粒子は電極に挟まれており,電極の影響によって粒子が感じる電場が変わるが,直流の場合には下面電極の最低次の影響は方程式系の形を変えずに定数をかえるだけであった.一方交流の場合には方程式系の形も変わるため,電極の影響も含めて数値的に計算したが,力学的性質には影響がなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザーピンセットで孤立系を安定してつくることはできなかったが,代わりに実験系を改善するとともに希薄系を繰り返し作製し運動を観察できた. 1粒子で非対称な往復運動をし正味の速度が一定となる周期解についてモデルで説明でき,準周期・カオス解の存在も確認した.得られた結果は投稿論文にまとめている途中である.また,集団運動の実験は次年度の測定に向けて実験系を整えられた.多粒子の運動の数値計算には今回の1粒子の理論的結果を用いる予定である.相互作用については研究者と議論することで新しい知見を得た. 以上を踏まえ,予定していた集団運動の実験の定量化ではないが,1粒子でも予期していなかった現象を確認できた点で,本課題はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
1粒子の運動の理論と数値計算,実験の結果を論文にまとめる.集団運動の渦生成について,実験での定常状態での性質を定量化する.今年度数値的に得られた1粒子の運動の性質を粗視化してもちい,流体相互作用と静電相互作用を考慮して数粒子系の数値計算をおこなう.予定通り数十~数百粒子レベルでおこる集団運動とのつながりを理解し,渦生成の説明を与える.
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Research Products
(5 results)