2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J06767
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 貴成 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 亜鉛 / 細胞外アデニンヌクレオチド代謝 / 亜鉛欠乏症 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究により、亜鉛欠乏状態がALP、CD73、ENPPの酵素活性の低下および、その低下に伴う細胞外ATP代謝の遅延を引き起こすことを見出していた。そこで今年度には、この細胞外ATP代謝の遅延が、実際の炎症などの症状を引き起こす分子メカニズムについて解析を試みることとした。 具体的には、マクロファージ様ヒト培養細胞株であるTHP-1細胞を用いて、亜鉛欠乏による細胞外ATP代謝の遅延が、インフラマソーム形成による炎症性サイトカインの分泌量に影響するのか調査した。しかしこれまでに仮説を裏付ける有効な結果は得られておらず、今後は単一の細胞ではなく、ラットやマウスなどの生体レベルで進めていく必要があると考えられた。 また本研究では、細胞外ATP代謝に関わる三つの分泌型亜鉛要求性酵素ALP、CD73、ENPPの亜鉛獲得による活性化機構についても解析を進めた。その結果、いずれの酵素の活性化にも、特殊なメカニズムが必要であり、ALPとCD73はZNT複合体依存的な活性化機構を示すが、ENPPはZNT複合体に依存しない活性化機構を持つことが明らかとなった。 また、前年度を含めたここまでの研究成果を、2018年8月22日に、Communications Biology誌に発表したほか、学会等にも積極的に参加し、研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の解析により、THP-1などの単一の細胞株では、亜鉛欠乏による細胞外ATP代謝の遅延による炎症などの影響をうまく検出できないことが明らかとなり、次年度での解析を方向付ける結果を得られた。また、細胞外ATP代謝に関わる分泌型亜鉛要求性酵素の複雑な活性化機構が明らかになるなど、新たな知見も多数得られたため、研究は概ね順調に進呈していると判断している
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの解析では、酵素活性の変化に注目して新規の発見に結びつけてきたが、一方、カスパーゼ1のような炎症を直接評価できる手法では、「亜鉛の欠乏は、細胞外ATP代謝の破綻を介して、炎症などの症状を悪化させる」という本研究の仮説をまだ立証できていないのが現状である。そこで次年度には、in vitroやin vivoでの解析を通じて、実際に炎症などの症状における亜鉛の役割を明らかにする必要があると考えている。 具体的には、これまでのin vitro条件での炎症評価法の改善に加え、遺伝子組換えラットなどの解析により、亜鉛欠乏症と細胞外ATP代謝との関連をより詳細に明らかにしたいと考えている
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Research Products
(7 results)