2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J06812
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 皐史 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 早池峰ー宮守オフィオライト / 超苦鉄質沈積岩 / 岩相層序 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度における主たる成果は、顕生代初期のオフィオライトパルスを構成する、典型的な島弧オフィオライトのひとつである、早池峰-宮守オフィオライトの超苦鉄質沈積岩の岩相層序を明確にしたことである。 まず、岩手県北上市および花巻市に露出する、早池峰-宮守オフィオライトの超苦鉄質沈積岩、約15キロ平方メートルにおいて、地質調査を計20日間行った。本調査において、沈積岩の岩相を、単斜輝石の含有量に着目してClinopyroxene-poor layer とClinopyroxene-rich layerとに分類したところ、これらが走向、N50°W、層厚、2cm~1kmで繰り返す、層状構造が認められた。層状構造の走向は、岩体南部の捕獲岩配列方向と調和的であり、この構造は重力によって斑晶が集積して形成されたものと考えられる。次に、集積構造の層序を決定するために、層境界から定方位採取した試料を薄片にし、かんらん石、クロムスピネルを対象に、EPMAを用いて鉱物化学組成のライン分析を行った。層状構造と直交する方向における、かんらん石のMg#、NiO wt%、クロムスピネルのCr#の組成プロファイルは、西方へ約15cmにわたって、連続的に分化する傾向を示した。よって岩体は西上位であることが分かった。以上をふまえ、超苦鉄質沈積岩の地質図を作成した。 本成果は、平成30年度における国際学会にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
早池峰ー宮守オフィオライトの超苦鉄質沈積岩における、Clinopyroxene-poor layer とClinopyroxene-rich layerの繰り返しは、沈積岩形成時のマグマだまりに、未分化マグマの注入が複数回あったことを示唆する。よって集積構造中の各層は、それぞれ異なる初生マグマを反映している可能性がある。本研究によってその構造と層序が明確となったため、各層に対応する初生マグマ形成イベントの、相対的な時間関係が議論可能となった。当初予定していた早池峰ー宮守オフィオライトにおける絶対的な年代測定は実施できていないが、これらの各層から初生マグマの形成条件の連続的な時間変化を調べることで、先行研究によって提案された、早池峰ー宮守オフィオライト形成時におけるスラブ落下モデルの妥当性が、高い時間分解能で検証できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ふたつの側面から研究を進める予定である。ひとつは、顕生代初期のオフィオライトの変動を引き起こした可能性があるマントル過程、スラブ落下モデルの検証である。スラブ落下によって生じた減圧溶融で形成されたとされる、早池峰ー宮守オフィオライト中の超苦鉄質沈積岩には、各層に応じて初生マグマ組成がそれぞれ記録されていると期待される。初生マグマの形成深度の時間変化を制約するために、沈積岩の下位から上位にかけて採取した単斜輝石の微量元素濃度を、レーザーICP-MASSで分析する予定である。 もうひとつは、申請者が平成28年度までの研究において、早池峰ー宮守オフィオライトから推定したマントル熱状態が、全球的なものであることを検証することである。流動分別が凍結されている貫入岩脈を用いてマントル熱状態を推定する手法を、カナダ、ニューファンドランド島に露出するBetts Coveオフィオライトのsheeted dikeに適応することを検討している。当該オフィオライトを研究した、外国人研究者に問い合わせを行い、情報収集を行った結果、今年度中の現地調査を計画している。
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Research Products
(2 results)