2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J06812
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 皐史 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | マントルかんらん岩 / オフィオライト / スラブ断裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の主たる成果は、二つのマントルかんらん岩体(岩手、早池峰-宮守オフィオライト; ニューファンドランド、Betts Coveオフィオライト)の岩相層序を明らかにしたこと、そしてオルドビス紀東北日本弧下のテクトニクスを高時間分解能で制約したことである。 早池峰-宮守オフィオライトでは、超苦鉄質集積岩体の岩相分類を実施した結果、岩体全域に層状集積構造があることを確認した。次に層序の下位から上位までの単斜輝石の重希土類元素を分析し、各層の親マグマの溶融条件の推定を行った。その結果、各層の親マグマの溶融はすべてgarnet安定領域(~80km以深)で生じており、マグマの分離深度は時間と共に深部へ進行したことがわかった。得られた分離深度は定常的な島弧のテクトニクスでは説明できないほど深いものであった。これらより、オルドビス紀東北日本弧下でのスラブ断裂テクトニクスを時間変化まで含めて検出することに成功した。顕生代初期オフィオライトパルスを構成する他のオフィオライトにも、本オフィオライトと同様に深部溶融の証拠が認められる。世界のオフィオライトパルスの成因も今回推定されたテクトニクスと関連する可能性がある。 カナダ, ニューファンドランドのBetts Coveオフィオライトでは、超苦鉄質集積岩体とシート状岩脈群に対し踏査を実施した。その結果、超苦鉄質集積岩体には層状構造と直交するpyroxenite脈があることが分かった。またシート状岩脈には3ステージの層順があることが分かった。この成果により各岩脈を形成した条件の時間変化を議論することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
早池峰-宮守オフィオライトに対し、当時の熱状態およびテクトニクスを抽出する手法を概ね実施し終えた。その結果、オルドビス紀の東北日本弧ではスラブ断裂が発生しており、マグマの生成深度が時間経過に伴って深くなることが明らかとなった。このような火成活動は当時の上部マントルでは一般的だった可能性が示されつつあり、これまでの成果が顕生代初期オフィオライトパルスの成因と深く関連することが期待できる。また実際にニューファンドランド島のBetts Cove オフィオライトの地質調査とサンプリングを実施し、早池峰-宮守オフィオライトから得られた結果の一般性を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ニューファンドランド島のBetts Cove オフィオライトから採取した3層順のシート状岩脈試料から、各層序に対応させて主要元素組成と微量元素組成を分析し、変質と変成効果を補正しつつメルト組成を抽出する。得られたメルト組成に対し、必要に応じてかんらん石および単斜輝石の分別効果を補正することで初生的なメルト組成を推定する。その後マントルかんらん岩の溶融実験結果と比較することで、溶融条件、熱状態、およびテクトニクスを推定する。推定された熱状態とテクトニクスを早池峰ー宮守オフィオライトから得られた東北日本弧弧のものと比較し、顕生代初期オフィオライトパルスの成因について議論する。
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Research Products
(4 results)