2017 Fiscal Year Annual Research Report
イネにおける葉脈パターン形成にともなう葉の組織分化の制御機構の解明
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17J06946
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 文香 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 葉脈 / イネ / 維管束 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉脈は、高等植物で養分や水分の運搬通路や葉の骨格となる重要な組織である。葉脈パターンは、葉の組織分化に伴い維管束が秩序立って分化して形成される。本研究は、モデル単子葉植物イネを材料に、代表的な葉脈パターンである平行脈の形成制御機構を解明することを目的としている。 平行脈は縦走維管束が等間隔に並走して構成されるが、その形成制御機構は全く解明されていない。そこで、縦走維管束間距離が減少する新規変異体alm2に着目して解析を行ってきた。まず、透明化法を用いた維管束間距離計測法を確立し、alm2の縦走維管束間距離を定量化して野生型との比較を行った。すると、alm2では有意に縦走維管束距離が減少していた。さらに、縦走維管束間距離が減少する原因として、alm2では維管束間を占める葉肉細胞の数が有意に減少していることも明らかにした。よって、ALM2遺伝子は細胞分裂に機能している可能性が考えられた。また、マッピングと次世代シーケンサーによる解析を進め、ALM2候補遺伝子を1つに絞ることができた。さらに、ALM2は遺伝子の発現に関与している可能性があるために、野生型とalm2との間でのトランスクリプトーム解析も行った。 イネの縦走維管束にはサイズと組織構造の異なる大維管束と小維管束が存在する。前年度までの研究で、大維管束と小維管束の形成過程が異なる可能性があることを形態学的に明らかにしていた。また、大維管束で特異的に発現する遺伝子としてOsYABBY1/2が知られている。そこで、それらと近縁な遺伝子OsYABBY6も含め、維管束分化や葉の組織分化に対する機能を解明することにしていた。本年度はCRISPR-Cas9法により、OsYABBY1/2/6の単独変異体、二重変異体や三重変異体を得ることができた。しかし、どの変異体においても、葉に関して見た目上の顕著な影響は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
alm2については、縦走維管束距離の表現型が定量化され、また原因遺伝子ALM2の候補遺伝子を1つに絞ることができた。また、トランスクリプトーム解析によりALM2の機能を知るための材料を得ることができた。 OsYABBY1/2/6の機能解析については、当初の予想に反して三重変異体で見た目上の顕著な異常が観察されず、作業仮説は棄却された。しかしながら、結論を出すことはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
alm2での初期発生過程の観察を進める。また、ALM2は細胞分裂に関与することが推察されたため、alm2での細胞分裂のマーカーの発現を解析する。さらに、ALM2候補遺伝子を同定するための相補性検定を進める。野生型とalm2との間でのトランスクリプトーム解析については、データの分析を進め、ALM2が発現を制御しうる遺伝子を探索する予定である。 OsYABBY1/2/6の大維管束での発現パターンと葉での維管束の表現型との関係性については、今後検証していく予定である。
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