2017 Fiscal Year Annual Research Report
明清考証学と徂徠学及びそれ以降の儒学に関する思想史的研究
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17J07001
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
SHI YUN 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 徂徠学 / 古義学 / 明清考証学 / 近世東アジア / 経書解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、主に以下の面から研究を進めてきた。 1.荻生徂徠の経学と明代学術との関係性についての研究。高山大毅・藍弘岳らの先行研究を踏まえて、荻生徂徠と明代学者、とりわけ楊慎との関係を示すことができた。また、徂徠のみならず、18世紀中期以降反徂徠学という立場の人々も同じく楊慎を重視する姿勢を有することを明らかにした。また彼らは共に古義堂とは関係していることが留意された。 その成果は日本思想史学会などで発表した。 2.徂徠学の周辺に位置する古義学派の学者に関する研究。徂徠学の形成・展開の時代背景及び学問環境を考察するため、天理大学古義堂文庫にて古義学派の人々についての関連史料の調査を集中的に行った。従来の研究では概ね徂徠と仁斎の関係性しか議論されてこなかった。この問題点を意識して、ほぼ同時期に活躍した徂徠と東涯の二人の比較研究を行い、その問題意識や方法論の相似を確認することができた。彼らは、共に「礼楽」研究に高い関心を払うほか、「声音之道」を唱え、言語研究の必要性を強調した。また経書解釈の目的は、「治人」にあることを同じく意識している。また仁斎・東涯に関する史料調査を行う際、従来問題視されなかった伊藤蘭嵎という人物及び関連史料を改めて取り上げることによって、18世紀中期以降の古義学の変容とその背景という新たな課題が提示された。この一連の研究の成果は、立命館史学大会などで発表した。伊藤仁斎・東涯に関する研究は論文としてまとめて学会誌に投稿し、夏に掲載することが決定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、国内外の学会・研究会に多く参加し、研究成果を発表した。うち、国内学会2回、「荻生徂徠の「古文辞学」に関する再考――明代儒学とのかかわりからみる」(〔東京〕日本思想史学会大会)、「「四書」から「五経」へ―仁斎以降の古義堂の学問再考―」(〔京都〕立命館史学会大会)、国際学会3回、「テキスト批判の方法からみる近世日中の経学研究の交渉」(〔中国・北京〕第9回東アジア文化交渉学会)、「『大学定本』諸版本から見る伊藤東涯の思想に関する一考察――明代儒学との関係を踏まえて」(〔中国・延辺〕第五回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム)、「『大学』研究からみる十八世紀後期の江戸儒学の動向」(〔中国・広州〕東亜漢文圏における日本語教育・日本学研究国際シンポジウム)などから、研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、引き続き以下の面から研究を進める。 1.楊慎をキーパーソンとして、江戸における明清考証学の受容という課題を引き続き行う。また、学会や研究会でいただいた助言を参考に、明末清初の学者、とりわけ顧炎武に対する古義堂側の認識について、史料の調査・分析を行い、その成果を国内外の学会にて報告する。 2.皆川淇園など18世紀中期に活躍した古訓学者と呼ばれる人々に焦点を当て、彼らの『大学』また『詩経』に関する著作を広く収集し、解読する。これによって江戸における経書解釈の問題意識及びその方法論の変化を明らかにする。 3.前年度紀州藩儒伊藤蘭嵎に関する調査成果を論文にまとめて投稿する。またその調査結果を手がかりにして、引き続き18世紀中後期、各地における藩校の創立に伴い、徂徠学・古義学の伝授方式及び内容の変化などについて考察を行う。
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Research Products
(6 results)