2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J07082
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日野 真人 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 人工染色体 / DNA複製 / カイコ / HP1 / ORC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多数の外来遺伝子の発現を自由自在に制御できる人工染色体の開発を2つの方法を用いて行っている。カイコ人工染色体が開発されれば、基礎研究・応用研究の発展が期待される。また、この人工染色体作製の際や遺伝子発現制御の際に必要となるDNA複製に関する知見を得るために、DNA複製機構に関する研究も合わせて行っている。 具体的には、以下に挙げる3つの項目に分けて研究を行っている。 1、「DNA複製誘導因子を用いた人工染色体構築」2、「内在染色体の削り込みによる人工染色体構築」3、「カイコDNA複製機構の解明」 項目1について、まず、DNA複製必須因子の中からDNA複製誘導因子(DNAに結合させることでDNA複製を誘導する因子)を選抜する実験を行い、Cdt1・Orc1・Cdc6を選抜した。そこで、これら因子を含む人工染色体(大腸菌Ori・薬剤耐性マーカー・蛍光タンパク質マーカーを含む)の構築を試み、Orc1・Cdc6で成功した。続いて、人工染色体がカイコ細胞内で維持されるか否かを確認するために、卵に人工染色体をうち込みカイコの成長後も維持されるかを確認したが、人工染色体の存在を確認することができなかった。項目2については、カイコ内在染色体に多数存在する配列の中からCRISPR-Cas9によって切断する配列を選定した。現在は、カイコ培養細胞内の内在染色体に、大腸菌Ori・蛍光タンパク質マーカー・薬剤耐性マーカーをインテグレーションするためのベクターをデザインし作製中である。項目3については、染色体構造とDNA複製との関係を明らかにするために、HP1とORCとの相互作用をInsect two-hybrid SystemとCo-IPを用いて明らかにした。この実験によりOrc2とHP1との相互作用を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、DNA複製誘導因子を用いた人工染色体構築 DNA複製必須遺伝子の中から、DNAに結合させることでDNA複製を誘導するDNA複製誘導因子の探索を行った。具体的には、カイコ培養細胞内でDNA複製必須タンパク質をプラスミドに結合させ、そのプラスミドが複製されるかをPCRを用いて確認した。結果として、Cdt1・Orc1・Cdc6を結合した時にプラスミドの複製を確認することができた。これら因子を含む人工染色体の構築を試みたところ、Orc1・Cdc6に関して人工染色体を構築することができた。 2、内在染色体の削り込みによる人工染色体構築 カイコ培養細胞内在染色体をCRISPR-Cas9を用いて切断していくという方法でサイズの小さなカイコゲノム(カイコ人工染色体)を作製していくが、今年度はCRISPR-Cas9によって切断するカイコゲノム上に多数存在する配列を選定した。現在は、カイコ培養細胞内在染色体に、大腸菌Ori・薬剤耐性マーカー・蛍光タンパク質マーカーをインテグレーションするためのベクターをデザインし作製中である。 3、カイコDNA複製機構の解明 染色体構造とDNA複製との関係を明らかにするために、HP1とORCとの相互作用に着目して実験を行った。この実験によりOrc2とHP1との相互作用を確認することができた。また、カイコには3種類のHP1が存在しているが、ORCとの相互作用の強さがHP1の種類によって異なるということを示唆する結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1、DNA複製誘導因子を用いた人工染色体構築 今年度作製したカイコ人工染色体に改良を加え、カイコの細胞内で安定に維持される人工染色体の作製を目指す。今年度作製した人工染色体が維持されなかった原因として、卵の中のヌクレアーゼによる分解や、細胞分裂の際の分配がうまくいかなかったということが考えられるので、「人工染色体をヒストンに巻いた後に卵にインジェクションする」「染色体分配関連因子を人工染色体に加える」といったことを計画している。また、カイコ個体においてはDNA複製誘導因子を用いて人工染色体が複製されるか否かについて確認ができていないので、これについて確認をしていく予定である。 2、内在染色体の削り込みによる人工染色体構築 カイコ培養細胞内在染色体に大腸菌Ori・薬剤耐性マーカー・蛍光タンパク質マーカーをインテグレーションする。さらに、ヨトウガ培養細胞内在染色体にカイコゲノム上に多数存在する(ヨトウガのゲノム上には存在しない)配列を切断するCRISPR-Cas9・薬剤耐性マーカー・蛍光タンパク質マーカーをインテグレーションする。この2種類の細胞を融合することによって、 大腸菌 Oriの入った小さなカイコゲノム(カイコ人工染色体)の作製を目指す。 3、カイコDNA複製機構の解明 ORCはOrc1・Orc2・Orc3・Orc4・Orc5・Orc6の6つのサブユニットで構成されている。カイコにおけるこれらサブユニットの相互関係についてInsect two-hybrid Systemを用いて明らかにする。また、ORCとカイコに3種類存在するHP1との相互作用について引き続き研究を進めていく。
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Research Products
(1 results)