2017 Fiscal Year Annual Research Report
「日中身装文化の交流史ー日清戦争から第二次世界大戦までー」
Project/Area Number |
17J07085
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
劉 玲芳 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 身装文化 / 交流 / 「支那服」 / 日本の学生服 / 中国人留学生 / 「支那趣味」 / 服装観 / 東洋ファッション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日中両国の異国に対する「身装文化」関連資料を蒐集、分析、考察することによって、日中間の交流によって形成された身装観に関する相互的な影響と、その実態を明らかにすることを目的とするものである。2017年度は、日本と中国の両国において、それぞれの一次資料を保存している図書館や研究所で資料調査を行い、下記のような三つの方面から近代の日中身装文化の交流史を研究した。なお、以下の研究成果の多数が、論文出版あるいは口頭発表済みである。 (1)日中間の身装文化交流の萌芽。まず日中両国の人々が相手国の身装文化に関する言説を分析し、相手国に対する身装文化への見方について検討した。具体的には、1870-1890年代に中国人の「日本服観」を読み取ることを試みた。また、1910-20年代において、日本人の言説から中国人の服装や髪型、身体などを抽出して分析し、当時の日本人の目に映った中国の身装文化の様相を明らかした。 (2)身装文化交流の展開――男性。まず、日中両国の男性に関しては、1910-30年代において、日本人男性の「支那服」(中国服)を描写した小説家や役者などの様々な身分の日本人男性と、「支那服」が登場する物語や言説を考察し、彼らにとっての「支那服」の意味を明らかにした。1910年代以降、男子留学生と日本人学生服の関係について考察した後、日本人学生服が中国に伝来した原因や経緯を解明した。 (3)身装文化交流の展開――女性。最後に、女性の間の交流について考察を行った。1900年代頃、来日した女子留学生の身装に関して、その変化の過程や原因を明らかにした。続いて、1910-20年代まで中国において流行していた「東洋髻」の正体や流行の経緯を検討した。また、1920年代の日本に現れた「支那服」のブームについて、当時の新聞記事や女性雑誌の記事を中心に分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度は非常に充実な一年であった。大量な新しい資料の発見によって、論文4本や口頭発表4件の研究結果を得られた。さらに、多くの学会の活動やシンポジウムに参加し、自分の研究結果を発信することができた。また、そうした機会を利用し、同じ専門分野の研究者はもちろん、専門分野と異なる研究者たちとの意見交換も積極的に行うことができた。そして、学会発表や研究室のゼミの発表を通して、自分の研究方法や立場を見直す機会を得た。それを生かし、より広い視点で研究を行うことができた。そこで、計画以上に研究が進展し、予想以外の研究結果も得られたのである。 以下、得られた研究結果を具体的に述べる。 最初の研究計画書にあまり注目しなかった中国人男性の身分を示す「中山装」について考察した。「中山装」は、実は日本の学生服から発展してきた服装であることが判明した。つまり、日中両国の男性の身装文化は互いに共有化され、影響を与え合っていたのである。これは、従来の交流史では見逃されてきたもので、新たな知見を見出したと言える。 また、1910-20年代まで中国において流行していた「東洋髻」の正体や流行の経緯を検討した。その結果、「東洋髻」は日本人女性の「束髪」であり、1900年代に中国に派遣された日本人女性教習や、1900-20年代の間に日本から帰国した女子留学生の影響によって、中国人女性のファッションとなったことを明らかにした。この現象を解明することは、日中両国の身装文化研究にとって、非常に有意義なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は博士後期課程の最終段階に入ったので、博士後期課程の一、二年目の研究成果をもとに、日清戦争以降、第二次世界大戦終戦までの期間における日中服装交流史をまとめたい。 本年度は、これまでに研究してきた結果に基づき、従来の研究を再検討すると同時に、国内外(日本・中国)における先行研究と資料の再調査、再確認作業と、本研究の成果を何らかの形(例えば成果出版物)にまとめる作業を行う予定である。これに加え、一年目や二年目と同じく、博士後期課程における研究結果を随時、国内外の学会やシンポジウムで発表をしたり、論文を投稿したりして公開する予定である。
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Research Products
(8 results)