2017 Fiscal Year Annual Research Report
miRNAがヒストン修飾の変化を介して動脈硬化を進展させる機序の解明
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17J07088
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
東島 佳毅 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / miRNA / 接着因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化は高血圧や高血糖により傷ついた血管内皮へ単球が接着することを引き金として始まる。その最初のステップとして血管内皮ではTumor necrosis factor (TNF)-αやinterleukin (IL)-4などの炎症刺激に応じてvascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)、intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)、E-selectinなど接着因子の発現が上昇する。所属研究室ではこれまでに、血管内皮細胞における炎症性刺激に応じたゲノムワイドなmicro RNA (miRNA) 誘導機構に ついて報告してきた。そこで本研究では、この研究を更に発展させて、接着因子の発現制御に関わる新規miRNAを同定することをひとつの目的とした。申請者はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いてマイクロアレイ解析を行い、TNF-αおよびIL-4刺激に共通して変動する2つのmiRNAを同定した。これら2つのmiRNAの合成mimicsを用いて、HUVECにTNF-α刺激を行った際のVCAM-1誘導性および単球接着に関して評価したところ、これら2つのmiRNAの合成mimicsはTNF-αによるVCAM-1の発現誘導および単球接着を有意に抑制した。さらに大変興味深いことにこれら合成mimicsはVCAM-1のみならずICAM-1やE-selectinなどのその他の接着因子ならびに炎症刺激で誘導される遺伝子の多くを抑制することが明らかとなった。以上より、今回我々が同定した2つのmiRNAは血管内皮細胞における炎症性遺伝子応答を調節するmiRNAである可能性が示唆された。今後これらmiRNAの標的遺伝子の探索および標的遺伝子の機能解析を行う予定にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いてマイクロアレイ解析を行い、炎症性刺激に応じて変化するmiRNAを複数同定した。さらに同定したmiRNAがVCAM-1、SELE、ICAM-1などの動脈硬化進展に関与する種々の接着因子の発現誘導を抑制することを明らかにした。これまでに同定したこれらmiRNAの機能を明らかにした報告はひとつもなく、今回の発見は非常に新規性が高いと考えられる。申請者はこれらの研究成果をすでに内藤コンファレンス、日本分子生物学会、アメリカ循環器学会、など国内外の学会で報告しており、当該研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
HUVECを用いたマイクロアレイ解析によって炎症性刺激に応答するmiRNAを複数同定した。そこで今後はこれら同定したmiRNAの標的遺伝子をRNA immunoprecipitation (RIP)とマイクロアレイを組み合わせた手法で探索予定である。具体的にはmiRNAが標的遺伝子を取り込む複合体(RISC complex)の主要コンポーネントであるAGOタンパクに対する抗体を用いてRIPすることで標的遺伝子の濃縮をかけた後にマイクロアレイ解析を行う。通常miRNAの標的探索にはTarget scanなどのin silicoデータベースが用いられるが偽陰性が多く認められる。今回我々はRIP-マイクロアレイを用いることで、細胞内で実際にmiRNAが標的とする遺伝子を同定することが可能となる。
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