2017 Fiscal Year Annual Research Report
AdS空間中の極小曲面の可積分構造に基づくゲージ/重力対応の検証
Project/Area Number |
17J07135
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
束 紅非 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 極小面積 / Toda field equation / 可積分系 / Bethe ansatz equation / 散乱振幅 / 結合領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は共同研究者の伊藤克司氏とともに、 B2及びAr型のmodified affine Toda field equationを調べました。Modified affine Toda field equationと等価な線形微分方程式の解の展開係数よりQ-関数を導入し、Q-関数が満たしている Bethe ansatz equationsを導出しました。それから可積分系を特徴づける Non-linear integral equationを導きました。その Non-linear integral equationは97年に P. Zinn-Justinが導出したものと一致します。さらに、この結果に基づいて, 可積分系の紫外極限のeffective central chargeを導きました。 これは可積分を特定する重要な道具になっています。この研究結果は論文準備中で, 発表する予定です。これらの結果に基づき、AdS4及びAdS5空間中の極小曲面の解析への応用も考えています。また, Argyres-Douglas 理論における応用が実現でき,それについて論文を発表しました。 また、申請者は非可換超対称ゲージ理論と対応する重力理論を調べました。申請者は bosonic とfermionic T-dual 変換を利用し、重力理論を簡単化しました。T-dual 変換により, 非可換超対称ゲージ理論の散乱振幅の計算は簡単化された時空の境界におけるnull polygon Wilson loop の期待値の計算に帰着します。さらに、強結合領域では、定数B-場は散乱振幅に一つの位相しか寄与しないことが明らかになりました。有限の結合領域において、非可換超対称ゲージ理論のグルーオン散乱振幅と通常のN=4 超対称ゲージ理論のグルーオン散乱振幅の違いは一つの位相しかないことが判明しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AdS4及びAdS5時空中の極小面積はそれぞれB2及びA3のmodified affine Toda field equationによって調べられます。申請者の研究結果により、B2及びArのmodified affine Toda field equationと対応する量子可積分系のデータが揃いました。これらに基づき、AdS4及びAdS5時空中の極小面積と対応する量子化積分系を見つけることができます。それは面積の計算及び強結合領域におけるゲージ/重力対応の検証と繋がります。現在論文を準備中で、近いうちに投稿するつもりです。また、極小面積だけではなく、Argyres-Douglas理論における応用も実現でき, それについて論文を発表しました。 AdS空間の可積分性を一部を保つ変形の場合の散乱振幅も調べました。具体的には、非可換超対称ゲージ理論と対応する重力理論を調べました。この重力理論はB-場などの寄与によって複雑な形になっており、未だに物理量が明らかになっていません。申請者は bosonic とfermionic T-dual 変換を利用し、重力理論を簡単化しました。この簡単化により、散乱振幅が極小面積の計算に帰着しました。強結合領域では、非可換超対称ゲージ理論の散乱振幅と通常のN=4 超対称ゲージ理論のグルーオン散乱振幅の違いは一つの位相しかないことが示されました。さらに、この結果は強結合領域だけではなく、有限の領域まで成り立つということも明白になりました。この研究結果は論文準備中で, 4月中で投稿する予定です。 以上のように, 本研究はおおむね順調に進展しています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「古典解の周りの揺らぎ (半古典)」及び「極小曲面とLGKP-弦の相互作用」を中心に研究します。
AdS3時空の極小面積の古典解は、Homogeneous sine Gordon (HsG) の可積分系で記述できることは既に知られています。しかし、その古典解周りの揺らぎを解析するのは困難です。申請者はまずAdS3時空の散乱振幅に関する pentagon operator product expansion (POPE) の手法を調べています。このPOPEの手法は相互作用の結合定数の任意のorderまで、使える方法です。この結果をHsG modelの結果と比べることにより, 半古典の解析に使える手法が開発できます。さらにAdS5空間中の極小曲面まで拡張し、半古典レベルにおいてゲージ/重力対応を検証します。
ODE/IM対応の手法はAdS 空間中の「極小曲面とLGKP-弦の相互作用」にも適用できます。前述の考察を参考し、その古典及び半古典のレベルにおける解析を行います。さらに、LGKP-弦をもっと一般的な閉弦に拡張し、対応している量子可積分系が存在するかどうかを考察します。また「極小曲面とLGKP-弦の相互作用」はゲージ理論側における「Wilson line とLGKP演算子の相互作用」と対応しています。ゲージ理論側の量子可積分性及びoperator product expansion の手法を利用し、対応物の考察を行います。任意の結合定数において「Wilson line とLGKP 演算子の相互作用」の解析をします。それは、ゲージ/重力対応の新しい検証になります。さらに、その拡張である「Wilson line と一般の演算子の相互作用」も考察します。
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