2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J07145
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松田 充 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | Andreas Gruschka / ドイツ教授学 / 授業研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究によって得られた主たる成果は、1)アンドレアス・グルーシュカ(Andreas Gruschka)の行っている授業研究の意義と課題を明確にしたこと、2)グルーシュカが中心となって開発した授業記録の電子アーカイブApaeKに収められるデータの分析を行ったこと、3)PISA後のドイツにおける授業研究の動向の解明、の三点である。 1)については、グルーシュカは授業分析によって、教師の教授が生徒の理解を疎外する教授学化の問題を具体的に捉え、「理解の教授」への契機を示そうとする。それは、授業改善のための具体的な手立てを提案するものではない。ポルマンス(Marion Pollmanns)の授業研究との比較を通して、あくまで授業への批判に留まり続けることに批判理論的な特質がある一方で、グルーシュカの教授学理論が射程に含む習得を解明できていないことに課題があることを明らかにした。2)グルーシュカが開設したアーカイブArchiv fuer paedagogische Kasuistik(ApaeK)に収められているデータにどのような記録が収められているのかを分析したうえで、そのデータ形式をグルーシュカが授業研究の方法として用いる客観的解釈学との関係から検討を行った。その結果、客観的解釈学による記録解釈に相応しい形式で授業記録が保存されており、授業記録が研究方法論との関連の下で作成されていることを明らかにした。3)PISA以後ドイツにおいて、社会学、心理学、教授学を基礎にした授業研究が展開してきている。この三つの動向の協働や対立は確かにPISA後に生じたものであるが、それぞれの授業研究の端緒は1960年代にすでに存在していたことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、1)と3)に関わる研究を平成29年度に行い、翌年度に2)に関して研究を行う予定であったが、年度内に2)に関わる研究を行うことができたため、当初の計画以上に研究が進展していると評価ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年のドイツにおける授業研究の隆盛は、実証的な教育研究(empirische Bildungsforschung)の趨勢という大枠の中で展開されている。より広い文脈で授業研究を位置づけるために、現在の実証的な教育研究の動向について検討を行う必要がある。また授業記録アーカイブについて、そこに収められているデータの分析を行ったが、実際にどのように授業を参観するのか、記録するのかということについては検討を行うことができなった。実際にグルーシュカらが行う授業研究に同行し、記録作成の過程について検討することが今後の課題である。
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Research Products
(4 results)