2017 Fiscal Year Annual Research Report
ウォーカー・エヴァンズ作品における「ドキュメンタリー」の問題
Project/Area Number |
17J07171
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑名 真吾 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | ウォーカー・エヴァンズ / ドキュメンタリー / 写真史 / アメリカ写真 / モダニスム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウォーカー・エヴァンズの唱えた写真芸術における「ドキュメンタリー」の概念に関して、従来からなされてきた議論に新たな視点を加えることにある。今年度は、エヴァンズが写真家としてのキャリアを形成するにあたって重要な契機となったフランス滞在期に注目し、一次資料調査を中心とした研究を進めた。アメリカ合衆国・メトロポリタン美術館内に設置されているウォーカー・エヴァンズ・アーカイブで長期の資料調査を行ない、当初の研究計画にある「ドキュメンタリー」の概念を背景としながら、フランス滞在期にエヴァンズが具体的にどのような芸術家・作家に興味を持ったのか、あるいはどのような経路を辿ってフランスを旅したかという点に注目し、メモ類や草稿を読み込むことで、当該時期のエヴァンズの動向を詳しく把握することが出来た。また、フランス国内での資料調査も行い、エヴァンズのフランス国内における滞在箇所を同定することができた。エヴァンズはこの時期にさまざまな芸術家との交流を目論んでいたものの、その交流は常に失敗していたという点は大きな発見であった。エヴァンズはインタビューや著作活動を通じて、常にフランス留学からの影響について語っていたが、実際のところはそうした影響は後年にやや強調され、誇張されていたのである。この歴史的事実を詳しく分析することで、従来の研究ではフランス滞在・フランス文化からの影響が過剰に見積もられていたエヴァンズの「ドキュメンタリー」概念を相対化する視点を生み出すことができると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後の研究に有用な資料が発見できており、当初の研究計画通りに進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は論文執筆を通じて研究を結実させていきたい。また、来年度以降も国内外の研究者との交流や、海外での資料調査を通じて、国際的な研究の水準を意識しつつ、充実した研究を進めたい。
|