2017 Fiscal Year Annual Research Report
Anomalous Heating of High Dense Fusion Plasma with Crossing Fast Electron Beams
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17J07212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小島 完興 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 高速点火核融合 / 高速電子 / 高強度レーザー / プラズマ / 特性X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大型レーザー装置の使用申請が採択されたため、当初計画では採用2年度目(来年度)に実施予定であった大阪大学レーザー科学研究所(以下、阪大レーザー研)の大型レーザー装置(LFEX)での実験を前倒しで行った。以下に、研究初年度の研究進捗をまとめる。 対向高速電子流の衝突のためには対向照射されるレーザーパルスがターゲット上で空間的・時間的に高精度で同期している必要がある。本研究では3台のカメラとLFEXビームと同じF値を持つCWレーザーからなる遠隔アライメント装置を準備し、ポインティング方向に50 um以下(集光スポット径以下)、フォーカシング方向に 100 um以下(レイリー長以下)の精度で空間同期を可能にした。また対向にくる2つのビームを直角プリズムで反射させ平行光線とし、時間同期を最小時間分解能300 fsのストリークカメラで調整した。この結果、数100 J級のレーザーパルスを空間的・時間的に高精度で同期し対向照射することを可能にした。この配置での実験の実施は本研究が世界で初めてであった。 今回の実験ではビーム1のみの一方向照射、ビーム2のみの一方向照射、ビーム1とビーム2による対向照射の3つの場合を比較した。その中でビーム2のみ、およびビーム1とビーム2の対向照射の2つ場合で高価数の銅イオンからの発光が観測された。一方で、ビーム1とビーム2の対向照射でおよそ2倍のレーザーエネルギーをプラズマに付与した場合でも、高価数の銅イオンからの発光量は増加せず、対向高速電子流によって起きると予測した特異な電磁場は生成していないと考えられる。本年度の研究でターゲットの製作手法および、対向高強度レーザーの空間的・時間的同期の手法については確立できた。次年度はターゲット厚の最適化を高繰り返しの小型レーザーおよび電磁粒子シミュレーションにより進め行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初研究計画にて2年目予定であった大型レーザー装置を用いた対向電子流発生の実験を前倒し実施した。キロジュール級の大型レーザーでの対向照射は世界で前例がなく、高精度でのレーザーパルスの空間・時間同期調整手法を確立したことは大きな成果である。また銅の特性X線スペクトルからは再現性の高いプラズマ加熱が確認されており、シミュレーションによる定量的な評価考察とともに論文誌への発表が期待される。 しかしながら、いまだ対向高速電子流により生じる特異な物理現象の観測には至っていない。本年度は、大型施設の使用認可スケジュールの都合のため、大型レーザーを用いた実験が先行したが、目的の物理解明のためにはより精緻な予備実験が必要であり、次年度は高繰返し小型レーザーを用いた精密な実験データの集積を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
より高確度、精緻なデータを取得して物理を詳細に論じるために、京都大学化学研究所の高繰り返し高強度レーザー装置を用いて実験を実施する。 高繰り返しレーザーはエネルギーが低く、特性X線の発光量が相対的に小さくなることからターゲットには C8H8 の層に C8H7Cl の塩素トレーサー層を挟んだ三層ターゲットを使用する。塩素は本年度使用した銅に比べて原子番号が小さく、特性X線の発光効率が高い。ターゲットへ対向から高強度加熱レーザーを照射することで対向高速電子流を発生させプラズマを加熱する。二つのレーザーのタイミングを変化させ、プラズマ加熱された領域での高速電子流の空間分布及び方向指向性などを調べる。高密度プラズマの対向高速電子の伝播はターゲット中心にある塩素トレーサー層からの Cl-Ka線の発光の空間分布により、方向指向性は Cl-He線の偏光分布よりそれぞれ評価する。これらの結果を高密度プラズマ中での背景電子の衝突効果を含む PIC シミュレーションコードによる結果と比較することで、高密度プラズマ中で起きる不安定性と対向高速電子流の集団ダイナミクスを明らかにする。
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Research Products
(1 results)