2017 Fiscal Year Annual Research Report
地球史前半の大陸地殻消長史の解明:古期砂岩中の砕屑性ジルコン同位体分析
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17J07214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沢田 輝 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 太古代 / 大陸成長 / 年代 / ジルコン |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の目標であった「ジルコン高精度ウラン鉛年代測定によるジンバブエ地塊のシュルグイ緑色岩体の年代決定」に関する作業は全て完了した。当初は、基盤の片麻岩、シュルグイ緑色岩体中の堆積岩、さらに貫入する花崗岩のジルコンウラン鉛年代によって年代を決定する予定だった。これまで、基盤の片麻岩は全く年代測定されておらず、シュルグイ緑色岩体中の堆積岩の年代は砕屑性ジルコンで最も若い粒子が34億年前、さらに貫入する花崗岩の全岩鉛-鉛年代が33億5000万年前であることから、シュルグイ緑色岩体中の年代は約34億年前とされてきた。しかし、より高精度のジルコン年代測定を行ったところ、基盤の片麻岩の年代は30億年前、貫入する花崗岩の年代は29億年前、さらに堆積岩中の砕屑性ジルコンは36億年前の年代を持つ粒子のみが見つかるという、先行研究とは大きく異なる結果を得た。これらのジルコン年代からは、シュルグウィ緑色岩体の形成年代は堆積岩中の砕屑性ジルコンは36億年前と貫入している花崗岩の29億年前の間ということしか言えない。そこで、当初の計画には無かったものの、超苦鉄質岩のレニウム-オスミウム年代測定を行ったところ、32億年前という年代値を得た。これらの測定によって「ジンバブエ地塊のシュルグイ緑色岩体の年代決定」という初年度の目標を達成した。さらに、ジンバブエ地塊北西部の太古代花崗岩類および原生代初期の砂岩中の砕屑性ジルコン年代測定も完了し、当地塊における大陸年代構成の変遷の制約に役立つ情報を得られた。これらの成果は日本地質学会愛媛大会およびアメリカ地質学会シアトル大会で発表・議論を行い、現在、論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標であった「ジンバブエ地塊のシュルグイ緑色岩体の年代決定」に関する作業は順調にすべて完了した。さらに、当初の予定にはなかったが、年代決定という目標達成に向けて新たに重要性の見出された超苦鉄質岩のレニウム-オスミウム年代測定を完了することができた。一方で次年度に計画していたジルコンハフニウム同位体比測定は、他の研究グループによる論文出版に先を越された。そこで、これ以上ジルコンそのものの同位体分析をしても新規性に乏しいため、大目標であった「30億年前以前の大陸消長」という課題達成へ向けて、太古代・原生代の古期砂岩の全岩微量元素濃度の測定から推定するという新たな手法の開発を考案し、その実現の目処が立った。国際的にも注目度の高い研究テーマにおける競争のため、実際に手を動かす内容は当初予定とは少し異なってきたものの、当初の大目標の達成に向けて概ね順調に研究は進展しているといえる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
大陸サイズをより直接的に反映する指標である砂岩の成熟度を、砂岩の全岩微量元素濃度の測定から推定するという新たな手法の開発を行っているので、それを次年度にはさらに拡張していく。特に、本年度採集できたカナダ東部の約30億年前の砂岩の分析を進める。砂岩の全岩組成は先行研究の分析数は極めて少なく、ジルコニウム正異常によって砂岩の成熟度を議論することはこれまで行われていなかった画期的な新手法である。 今後はまず砂岩の全岩組成の分析数を増やす必要がある。現在のところ、大目標である「30億年前以前の大陸消長」という課題達成へ向けて太古代や原生代の砂岩を中心に分析を進めている。さらに若い時代の顕生代砂岩であってもコレまで余り分析がなされていないので、堆積環境のよくわかっている砂岩と比較するという意味で、それらの分析が必要になるかもしれないので、砂岩分析の順序を戦略的に検討を進めていく。さらに他の元素(たとえばチタン、クロムなど)を使って大陸のサイズや組成の変化の議論を試み、大陸地殻の消長史のより具体的な復元を試みる予定である。 また、次年度は最終年度でもあるので、これまでの研究業績をそれぞれ投稿論文にまとめる作業もさらに推進していく必要がある。
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