2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Becoming of Shared Knowledge through Recollection and Oblivion: Toward a Development of Sociological Theory of Knowledge
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17J07319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高艸 賢 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | アルフレート・シュッツ / 現象学 / 現象学的社会学 / 生の哲学 / 意味 / 生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アルフレート・シュッツを中心に、現象学ならびに現象学的社会学に関連する古典的著作の読解にあたった。シュッツの著作に関しては、1920年代に書かれた草稿 Lebensformen und Sinnstruktur、1932年に書かれた主著 Der sinnhafte Aufbau der sozialen Welt、1940年代末から50年代にかけて書かれた草稿 Reflections on the Problem of Relevanceを中心に検討し、彼の「生成」「意味」「類型」といった概念の内実を明らかにした。その上で、自己と他者の間で現実が共有される(共有されているという確証が打ち立てられる)メカニズムを、シュッツの概念に基づいて分析した。以上の内容は、本年度の論文・学会報告の中で発表した。類型化の理論については、次年度の初めに開催されるInternational Alfred Schutz Circleでの報告の準備として、概念整理などの基礎的な作業を行った。また、後期シュッツの生活世界論の論理構成が彼の前期における論理構成からどのように変化したか、という点の解明にも着手した。この点を学説史研究として綿密に調べ上げ精緻な理論的分析へと展開させるには時間を要するため、次年度も引き続き検討する。 このほかに行った作業としては、フッサール、ベルクソン、ハイデガー、メルロ=ポンティといった哲学者の著作の読解が挙げられる。彼らの著作を参照することで、「生きられる時間」や「記憶」などの概念が社会的現実の構成過程を明らかにする上で持ちうる意義や、それらの概念が現象学的アプローチと社会学的アプローチとの蝶番となる可能性について、検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、シュッツを中心に現象学(的社会学)の古典を検討し、基礎概念の整理を行うことであった。その意味で、本年度の進捗状況は概ね予定通りである。また、「類型化」「地平」といった後期シュッツの概念の検討に関しては、当初の計画よりも進展した。その結果、前期から後期にかけてのシュッツの思考の展開を追うという、学史研究としても理論研究としても重要な作業に着手することができた。しかし他方で、記憶と忘却に関する概念・理論の整理に十分に取り組むことはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の進捗状況を踏まえ、次年度は以下の方針で研究を進める。 ・後期シュッツの生活世界論の検討の精緻化を進める。とりわけ、知識と自明性に関するシュッツの見解に注目し、シュッツ現象学の独自の境位を見定めることを目指す。 ・現実構成のメカニズムにおいて記憶と忘却がどのように関係しているかについて、古典的著作を中心に基礎概念の整理を進める。これにより、体験される時間の流れを核とする理論を構築するための足場を築くことを目指す。
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Research Products
(3 results)