2017 Fiscal Year Annual Research Report
エスニシティとセクシュアリティ:イスラエルのピンク・ウォッシングを事例に
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17J07426
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保井 啓志 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | イスラエル / セクシュアリティ / ジェンダー / 性的少数者 / パレスチナ問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究員は、平成29年度の研究テーマを『性的少数者の人権を求める運動とパレスチナ問題の交差』とし、研究を進めてきた。今年度の成果を、前期と後期の二つの期間に分割し以下にその概要を報告する。 1.前期 研究員は、先行研究の購読を継続しながら、かねてより進めていたピンクウォッシングに関する資料の収集と整理を行った。ここでは主にイスラエル政府による広報の言説の分析と、国内の運動がいかに接続してきたかを分析している。従来地域的視点が欠けがちであったジェンダー・セクシュアリティ研究の視点をイスラエル地域研究に統合する本研究の視座は、イスラエル社会及び政治的変動の考察の仕方に変容をもたらす可能性を秘めている点で重要と考える。これらの成果は、日本中東学会、日本女性学会において報告を行った他、現在論文として執筆を行っているところである。また、有志の市民団体による公開講演会にてイスラエルの性的少数者を取り巻く状況に関する講演を行うなど、社会的アウトリーチ活動にも力を入れた。 2.後期 8月より、エルサレムに長期に亘り渡航している。エルサレムにあるヘブライ大学ローズバーグ国際学校にてヘブライ語コース(ウルパン)を受講し、ヘブライ語及びアラビア語の習得に大きな進展が得られた。特にヘブライ語に関しては、初級の日常会話レベルを修了し、ヘブライ語での現地資料の収集に必要なだけの十分な語学力を習得した。また、これらの語学の向上と並行し、現地における一次資料(ハ=アレツ紙やエルサレム・ポストといったヘブライ語新聞媒体、活動団体のホームページなどからの情報)の収集を行った。また、エルサレムにて行われた性的少数者に関する最大のイベントにて資料の収集を行った他、現地活動団体とコンタクトを取っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、かねてより取り組んでいたピンクウォッシングとそれを取り巻く諸問題の研究および分析に進展が得られ、その成果を日本女性学会及び日本中東学会の口頭報告にてまとめることができた。また、これらのまとまった成果は、さらに現在執筆中の原稿にて発表するつもりである。また、アラビア語・ヘブライ語の習得に期待以上の進展が得られ、現地の性的少数者の人権をめぐる運動体へのアクセスに見通しがついた。この点に関しては、収集が未だ十分ではないため、次年度に重点的に情報収集を行ってゆきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究員は、本研究課題の遂行のため、以下の方策に従って研究を行う。 イスラエルにおける性的少数者の人権を求める運動の歴史及び動きの研究を引き続き継続しつつ、女性やパレスチナ人の人権を求める運動、それから動物の権利を求める運動との比較を行いながら、「人権」の枠組みにおいて行われる各種の取り組みと、パレスチナ問題やシオニズムといった思想的整合性及び矛盾に幅広く目を向けたい。 これらの研究の遂行の為、 1.ジェンダーやセクシュアリティに関するものだけでなく、シオニズム及びイスラエル政治に関する先行研究の更なる読解を進めることで、より抽象的な枠組みからイスラエルにおけるそれぞれの動きとその思想的結びつきを分析する。 2.引き続き、ヘブライ語及びアラビア語の語学力のさらなる向上及び、一次資料の収集を重点的に行い、運動の細部をより明らか理解する。
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Research Products
(2 results)