2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J07578
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
及川 雅斗 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 健康診断 / 健康投資行動 / 政策評価 / 教育水準と健康状態 / 高齢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は主に、2008年に導入された特定保険診査・特定保健指導と呼ばれる政策の効果推定を定量的に分析した。分析に際しては、特に政策導入の効果が教育水準に依存して変化しうるのかに着目して分析を行った。 分析では、「くらしと健康の調査」という中高年者を対象としたパネル調査から得られたデータを利用した。データから得られる、BMIといった健康指標、栄養摂取状況や運動時間といった健康投資行動をアウトカム変数として用いて健康診断制度変更の政策評価を行った。分析に際しては、被雇用者とその他のグループの間の健康診断受診率の違いから生じる政策効果の程度の違いを用いることにより、健康診断の受診行動の内生性に対処した。加えて、データのパネル構造を利用することにより、健康に関する選好など個人の時間不変な観測不能な異質性を考慮した分析を行った。 分析の結果、教育水準の高いグループでは政策導入により健康指標の改善が推定された。一方で、教育水準の低いグループではそのような改善は推定されなかった。同様に教育水準の高いグループでは、運動量の増加や栄養摂取状況に変化も推定され、これらの変化が健康状態の改善を導き出した可能性が示唆された。これらの分析の結果、教育水準と健診が行動や健康状態に与える影響との間に正の関係があることが示唆された。したがって、実際の制度運営に際しては、このような異質性を考慮する必要があることが示唆される。 また上記の研究と並行して、高齢者の引退と健康状態との関係に関する研究や親世代への介護供給が中高年世代の労働供給に与える影響に関しても研究を進めてきた。次年度ではこれらの研究結果を踏まえた上で、高齢化社会における政策のあり方についてさらなる知見を深められるよう、研究を進めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データのクリーニング作業が想定以上に遅れてしまい、その後の計量分析や予定していた調査にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、現在までに行った分析の頑健性の確認を行う。その上で、特定保険診査・特定保健指導導入の政策効果が教育水準により異なるメカニズムを明らかにするために追加の分析を行う予定である。そのために、必要に応じて政府統計の集計データ・匿名データ等の利用も視野に入れて準備も行う。
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Research Products
(9 results)