2017 Fiscal Year Annual Research Report
音響特性データベースを用いたび漫性肝疾患の定量診断技術の開発
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17J07693
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 一陽 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 医用超音波 / 音響特性 / 脂肪酸 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 定量診断 / 計測工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態と音響特性との関係性を解明することを目的とし、(1)マウス肝、脂肪酸、および脂肪酸処理を施した培養細胞の音響インピーダンス計測、および(2)疾患モデルラットを対象とした病理学的特性を踏まえた音速計測を実施項目とした。 項目(1): 異なる症例モデルマウス(正常肝、脂肪肝、NASH、担癌)を対象とし、中心周波数80MHzの単振動子を用いた音響インピーダンス計測およびガスクロマトグラフィを用いた摘出マウス肝組織の脂肪酸分析を実施した。結果として、NASH肝の音響インピーダンスが有意に低値となり、かつNASHに特異的な脂肪酸(オレイン酸、アラキドン酸、パルミトオレイン酸)の含有量がNASHで優位に多いことが示された。以上を踏まえ、高分化型ヒト肝がん由来細胞(HuH7)に対して、ガスクロマトグラフィ分析において検出感度以上であった7種の脂肪酸(アラキドン酸・ドコサヘキサエン酸・エイコサペンタエン酸・オレイン酸・パルミチン酸・パルミトオレイン酸・ステアリン酸)処理を行った細胞、および脂肪酸溶液単体の音響インピーダンス計測を行った。結果として、NASHに特異的な脂肪酸の音響インピーダンスが低く、マウス肝組織計測における傾向の妥当性が確認された。 項目(2): 組織の病理学的特性と、音響学的特性との関係性を評価するために、疾患モデルラットを対象として、中心周波数250 MHzの超音波を用いて、7 μm薄切組織の計測を行った。細胞核、細胞質、および線維組織(肝線維症およびNASH肝のみ)の音速解析を行った結果、全ての細胞小器官の計測結果においてNASHの音速が有意に低く(p<0.01)なり、肝病変によって肝臓の音速が異なること、およびNASH肝における音速が低くなることをミクロな視点で示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス肝臓の音響インピーダンス解析では、各疾患モデルについて、これまでの検討結果と併せることで十分な標本数を確保し、計測・解析の妥当性を担保した状態での解析結果の蓄積ができている。また、培養細胞と脂肪酸の混合培地における音響インピーダンス解析では、計測条件の統一などによる解析精度の向上もあり、これまでに理解できていなかった新規の脂肪酸と肝臓における音響インピーダンスの関係性についての知見も得られている。また、肝臓の音速解析においてもデータの蓄積面では進展があったが、精度の向上が認められていない。これに関しては新規の計測技術の開発を進めており、次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)脂肪酸の分子構造と音響特性との関係性の妥当性の検証、および(2)進捗が遅れている音速計測の精度向上の2点に主眼を置き研究を推進する。1点目については、今年度の結果において示唆された脂肪酸の分子構造と音響特性との関係性を検証するために、濃度が異なる多種の脂肪酸溶液の音響特性の計測を行う。また、2点目については、中心周波数250-500 MHz超音波を用いた計測手法の考案を目指す。これによって、これまでは難しかった脂肪を含む組織の音響特性の把握が期待できる。最終的な検証実験として、臨床検体を用いて同様の計測を行い、病理学的所見と照らし合わせて精度検証を実施する予定である。
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Research Products
(15 results)