2017 Fiscal Year Annual Research Report
一般化トンプソン群のCAT(0)方体複体への群作用の研究
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17J07711
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 本子 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | トンプソン群 / 高次元トンプソン群 / 直角アルティン群 / CAT(0)空間への群作用 / 普遍写像類群 |
Outline of Annual Research Achievements |
(一般化トンプソン群の部分群構造について)任意の直角アルティン群が高次元トンプソン群への埋め込みを持つことを証明した。この結果は、自由アーベル群の自由積の埋め込み可能性に関する先行研究結果(Corwin, 2013)の拡張となっている。また、一般の直角アルティン群の埋め込みに関する先行研究結果(Bleak-Belk-Matucci, 2016)に比べ、各直角アルティン群が埋め込まれるトンプソン群の次元に対してより良い評価を与える。実際、本研究の結果を適用することで、各自然数nに対し、n次元トンプソン群に埋め込まれる直角アルティン群の例を新たに無限個構成することができる。この結果は、高次元トンプソン群の部分群構造が次元ごとに全く異なることを示唆している。 (一般化トンプソン群の有限次元CAT(0)空間への作用について)高次元トンプソン群は、ルベーグ被覆次元有限の完備CAT(0)空間へsemi-simpleに作用するとき、常に大域的な固定点を持つことを示した。この証明はCAT(0)空間の閉凸集合に関するHellyの定理を用いるものであり、トンプソン群Vのその他の一般化やトンプソン群Tなど、より広いクラスの群に適用することができる。この結果は、トンプソン群V・Tの木への単体的作用が常に大域的な固定点を持つというFarleyの結果の拡張となっている。また、有限次元CAT(0)方体複体への作用が常に大域的な固定点を持ち、ある無限CAT(0)方体複体に大域的な固定点を持たずに作用する群の最初の例を与える。 (普遍写像類群に対応する一般化トンプソン群について)Funar、Neretin、Aramayonaらによって考えられていた符号付きトンプソン群について、トンプソン群との間の同型写像を構成し、Funar-Aramayonaの普遍写像類群の同型問題が解決できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用年度1年目の研究課題の一つとして設定していた、高次元トンプソン群が有限次元CAT(0)方体複体への作用に関して固定点性質を持つかという問題を解決することができた。 直角アルティン群の埋め込みに注目することで、高次元トンプソン群の部分群構造が次元ごとの特徴を反映していることが確認された。当初研究を予定していた、高次元トンプソン群がピクチャー群に埋め込み可能かという問題は、Genevoisによって否定的に解決された。証明には、高次元トンプソン群への直角アルティン群の埋め込みに関する本研究の結果が一部用いられている。 符号付きトンプソン群に関して、普遍写像類群への応用の観点から新たな研究課題を設定することができた。符号付きトンプソン群に、カントール空間の自己同相群の部分群としてwell-definedな定義を与えたことで、群の性質や先行研究との関連性を調べる上で見通しが良くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
一般化トンプソン群の部分群構造の研究を進める。現在までの研究により構成した、直角アルティン群の一般化トンプソン群への埋め込みが、擬等長埋め込みであるか調べる。また、自由アーベル群の自由積の構造を持つ直角アルティン群の擬等長埋め込み可能性について調べる。これらの結果を元に、高次元トンプソン群の次元の情報を反映する一般化トンプソン群の次元を定義する。 一般化トンプソン群の固定点性質について、得られた結果の拡張可能性を探る。一般化トンプソン群は、有限次元完備CAT(0)空間に作用するときだけでなく、有限次元のBusemann空間に作用するときも大域的固定点を持つ可能性がある。また、現在までの研究で、トンプソン群Tの一般化については固定点性質を調べるのが難しいことがわかった。これらの群についても、非正曲率距離空間への作用に関する固定点性質を調べる。KimとKoberdaとLodhaによって定義されたリング群のクラスに注目し、固定点性質を調べる。
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Research Products
(8 results)