2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J07818
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 健 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ラシュバ / トポロジカル絶縁体 / スキルミオン |
Outline of Annual Research Achievements |
空間反転対称性の破れた金属と磁性の組み合わせは、トポロジカル絶縁体における量子異常ホール効果や磁気スキルミオン結晶が誘発するトポロジカルホール効果といった、新奇物性を生み出す源となっている。本年度は、トポロジカル絶縁体の表面状態や薄膜ヘテロ界面に代表される、空間反転非対称な2次元電子系における磁気秩序の発現を調べた。 一般に異種物質のヘテロ界面では、界面及び母物質における空間反転対称性の破れに応じてラシュバ型とドレッセルハウス型のスピン軌道相互作用が働く。本研究では、空間反転中心の存在しない2次元電子系と磁気モーメントが結合した系を対象として、解析的なアプローチも交えながら数値計算によって基底状態磁気秩序を探索した。その結果、スピン電荷結合の大きさが電子の運動エネルギーよりも小さい弱結合領域において、スピン軌道相互作用によるフェルミ面の分裂に依存した多彩な多重Q磁気秩序を見出した。具体的には、ラシュバ型とドレッセルハウス型のスピン軌道相互作用の大きさが等しい場合については、6つの波数ベクトルで構成される複雑な6重Q磁気秩序を見出した。またこの6重Q磁気秩序は、有効磁場に対応したスカラーカイラリティーが実空間でチェッカーボードのような複雑なパターンを示すことがわかった。一方で、ラシュバ型のスピン軌道相互作用のみが働く場合については、スカラーカイラリティーが帯状に広がった2重Q磁気秩序を発見した。 また上記の成果について、日本物理学会及び国内のワークショップにおいて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、磁気モーメントと相互作用した、ラシュバ-ドレッセルハウス型スピン軌道相互作用の働く2次元電子系における磁気秩序を明らかにした。トポロジカル絶縁体の表面でも同種のスピン軌道相互作用が働いており、トポロジカル絶縁体の磁性を探索する上で大きな足掛かりとなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、本年度に上げた以上の成果をまとめて、学会誌に発表する。そして以下の2つの研究プランを掲げる。(1)ヘテロ界面と同種の系としてトポロジカル絶縁体の表面状態に着目し、強磁性秩序と異常ホール効果の発達について、磁性及び非磁性不純物の空間配置・濃度依存性などを調べることで、量子異常ホール効果が高温で現れるための最適化条件を見出す。(2)磁性トポロジカル絶縁体などを対象として、空間反転対称性の破れと磁気秩序の共存に特有の量子輸送現象及び光学現象を調べる。
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