2017 Fiscal Year Annual Research Report
非金銭的インセンティブと社会的行動に関する理論的・実験的研究
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17J07819
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱田 高彰 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 実験経済学 / 社会的選好理論 / 不平等回避 / リスク選好 / 認知バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.他者に関するリスク選好(メリーランド大学経済学部原朋弘氏との共同研究) 不確実な他者に対する人々の社会的行動を分析する研究である。特に、他者が確率的に自分の好まない性質を持つ際に、人々はどのような意思決定メカニズムのもと行動するかを検証する。今年度の研究実績は以下の通りである。 (1)社会的選好理論における不平等回避モデルを応用し、他者に関するリスク下の行動を描写する理論モデルを構築した。既存理論の問題点は、帰結主義的な効用を前提としている点であり、この点を改善するべく、相手の状態に依存して、選好または確率認知が変化するモデルを構築した。特に、我々は確率認知の歪みに注目しており、好まない相手に対する認知バイアスが意思決定に大きな影響を与えていると考える。 (2)既存理論の欠陥及び我々の理論の妥当性を検証するための実験を考案し、Amazon Mechanical Turkを用いてパイロット実験を実施した。実験では、既存理論による予測と食い違う行動が観察され、我々の理論予測が実験の結果をうまく描写する結果となった。意思決定メカニズムの解明に関する追加実験では、統計的に有意な結果を得ることができなかった一方で、データからその兆候を読み取ることが可能であった。これを受けて、本実験に向けたデザインの改善を行ったのだが、そこに大きな時間を要してしまい、本実験は、年度内の実施に至らなかった。 2.その他の非金銭的インセンティブに関する研究 上記実験研究の他に、非金銭的インセンティブと経済行動に関する理論研究を進行させた。まず、以前から進めてきたグループ選択に関する研究を改訂した上で、国際学会にて報告した。また、組織における効率的なチーム生産と、チーム構成員の非金銭的動機に関する異質性との関わりを、様々なケースに分けて明らかにした。この研究についても、国内の学会で報告の後、改訂作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通りに本実験を実施できなかった点を考慮すると、遅れていると言わざるをえない。しかしながら、パイロット実験の結果を受けて実験デザインを一部再検討・改善する必要が生じたため、研究上必要な遅延であったと考える。また、その他の理論研究においても進行させた上で、国内外で研究発表を行っている。これらも勘案して、(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記1に記載の本実験を確実に実行していく。パイロット実験の結果は、意思決定メカニズムをうまく識別できたとは言いづらく、現状は既存理論の欠陥を指摘したまでにとどまっている。メカニズムの解明部分については、念入りなデザインのチェックを経た上で本実験を実施したい。また我々の理論モデルは、他の有力な既存理論に従う形で構築される一方、公理的な特徴づけには至っていない。特に、不平等回避モデルとリスク選好に関する定式化の方法については、理論的にもまだまだ多くの問題を残している。本実験を遂行するとともに、理論的背景のさらなる分析も進めていきたい。
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Research Products
(2 results)