2017 Fiscal Year Annual Research Report
微小化学分析・結晶組織観察から試みる造礁性サンゴ骨格形成過程の理論化
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17J07874
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
甕 聡子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 造礁サンゴ / 炭素同位体 / 酸素同位体 / 結晶組織 / バイタルエフェクト |
Outline of Annual Research Achievements |
造礁サンゴの骨格は古環境復元ツールとして利用できることが経験的に知られ、広く用いられている。今後、古環境復元の高精度化を目指すうえで、「生体」が骨格形成過程にどのような、またどの程度の影響を与えているのかを推定することが必要となる。そのため、本研究では外的環境変動をコントロールした状態で、骨格中の微量元素や同位体がどのように変化するのかを明らかにする。また「生体」の影響をサンゴとその共生生物である褐虫藻に分けられないか模索する。平成29年度は平成30年度以降に実施予定の光量や飼育温度を変えた実験を行うにあたって予備実験として、自然海水を用いて(1)光量を変えて昼夜サイクル(12時間ごとにライトのスイッチを切り替える)と常時暗所にて数日飼育した場合と飼育温度を変えた実験を行った。また(2)褐虫藻の有無別でサンゴを飼育した。さらに(3)サンゴ骨格の微量元素・同位体を高分解能・高精度で分析するため、試料作成方法の検討を行った。結果、(1)と(3)についてはいくつかの問題点を洗い出すことができた。(2)については飼育実験により骨格試料を得ることができ、マイクロX線回折による骨格全体での鉱物相同定を行った後、ミリ‐マイクロオーダーの分析として、光学顕微鏡観察と走査電子顕微鏡観察による骨格構造全体の観察、EDSによる化学分析を行った。結果、褐虫藻の有無によって鉱物相や骨格重量に大きな差は見られなかった。また透過電子顕微鏡の観察では、同一個体内で部位によって結晶組織に違いがある可能性を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
褐虫藻の働きを評価するために第一段階として必要になる、褐虫藻と共生しているサンゴとしていないサンゴ骨格試料を得ることができた。得られた試料について分析を行い、骨格の鉱物相、骨格構造全体把握ができている。また平成30年度以降に実施予定の光量や飼育温度を変えた実験を行うにあたって予備実験を行うことができた。この予備実験から、問題点を洗い出すことができた。 さらに微細な結晶組織観察を透過電子顕微鏡で、また同位体分析をNanoSIMSで行うことが本研究課題解明のために必要となる。そのための試料作成方法についても準備を進めた。透過電子顕微鏡観察では実際に観察を行うことができた。NanoSIMSを用いた分析のための試料準備も試行し分析用試料を製作した。実際に分析した結果、改善点を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
外部環境条件の異なるサンゴ骨格を得るために、飼育実験を進めていく。また現時点での問題点を基に分析に最適化した試料作製法および分析法の模索し、安定同位体比の分析を行う。サンゴ骨格の結晶組織については、褐虫藻の有無による違いを比較できるデータセットを十分に確保できていない。今後はサンゴ骨格構造を網羅するように、観察を継続する。
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