2017 Fiscal Year Annual Research Report
Diachronic Study of Sinitic Languages
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17J07882
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
CORTICODOSSANTOS MIGUEL 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 漢語系諸語 / びん語 / びん北語 / 言語史 / 分岐学 / 系統分類 / 漢訳聖書 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の初年度である平成29年度は、主に以下の3つの研究活動を行った。 1. びん語に属する沿岸部の数地点の方言について、びん祖語の音韻範疇の合流が生じたか否かで形質行列を作成した。それから、分岐学の手法に従い、系統推定ソフトウェアパッケージPHYLIPを使用して、Camin-Sokal再節約法に基づいた予備の最小突然変異系統樹を推定した。その過程で、系統解析の正確度・精度を上げるため、先ずはびん語それぞれの下位方言群についてその音韻史をより一層詳細に解明せねばならないと考えるに至った。 2. 系統解析を行うに当たっては、膨大な言語データが必要となるが、びん語に関しては公開された良質なデータベースが存在しないため、本年度は数多くの先行研究を精査し、データベースの構築を進めた。 3. びん語びん北方言群に属する建寧語、建陽語について、19世紀末期の文献に基づき、その特質の解明を進めた。これらの文献はラテン文字のみで記された漢訳聖書であるため、ラテン文字に推定音価を与え、一音節毎に漢字に翻字する作業を最初に行う必要がある。1896年刊建寧語マタイ福音書と1900年刊建陽語マタイ福音書の両文献を中心に翻字作業を行い、これらの情報もデータベースとして保存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、びん語に属する沿岸部の数地点の方言について予備の系統推定を行い、その過程で今後の方向性を決定し、研究遂行の計画を調整することができた。それから、系統解析に必要な言語データを収集し、データベースの構築も順調に進められた。最後に、19世紀末期の文献の分析は、びん北語の言語史の解明のための大きな一歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記文献の解読・分析によって得られたデータに基づき、19世紀末期の建寧語、建陽語の音韻、語彙と文法的特徴を纏め、現代語との比較を通じて過去百年余りに生じた言語変化の諸相と方向性を定める。更にこれらの文献の基礎方言を検討する。『1896年刊建寧語マタイ福音書の研究』の初稿を完成させる。 それから、上述のデータベースを完成させる予定である。但し、従来の言語調査では漢字音を中心に記述が行われたが、読書音は必ずしも基礎語彙を反映しておらず、系統情報が低いため、必要に応じて確認調査を行う。 また、びん北祖語とびん中祖語を再構し、福建省内陸部のびん語諸方言について予備系統推定を行う。得られた知見について、国内外学会で口頭発表を行う、或いは学術論文を執筆し、学術誌に投稿する予定である。
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