2018 Fiscal Year Annual Research Report
ジョン・リドゲイトの華麗文体の形成と受容における物神性
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17J07922
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新居 達也 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ジョン・リドゲイト / aureate style / 中世英文学 / 写本研究 / マテリアリティ / 読者層 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究におけるCambridge, Trinity College, MS R.3.21(以下、R.3.21)についての事例研究を体系化し、さらにJohn Lydgateの華麗文体作品受容の全体像を明らかにするために、15世紀中葉から後半にかけてロンドンで作成され、流通した一連の写本群についての調査を進めた。 まず、R.3.21との比較を行うための足掛かりとして1430年代初頭に筆写されたCambridge, Trinity College, MS R.3.20(以下、R.3.20)について考察した。R.3.20 には写字生John Shirleyによる詳細なルブリックや注釈が各作品に付されており、それらをもとに作品に対する初期の読者の反応を見ることができる。本研究では、特にラテン語聖歌・詩篇翻訳作品の多くに原典の一節が書き添えられている点に注目し、これらの書き込みが原典に依拠して作品を権威付けるためのものであると同時に、ラテン語に含意される文化的格差を利用して平信徒の読者から作品を他者化し、価値づけることを試みたものとして考えられることを主張した。加えて、このような作品の価値づけの背景として同時代の公的領域での商人階層の信仰形態が関係している可能性を指摘した。この研究成果は2018年5月に日本英文学会全国大会において発表した。 このようなR.3.20の受容は、15世紀後半の写本市場の動向を反映したR.3.21の重要とは異なる固有の特徴を示しつつも、当時の社会における公的言説とロンドン市民読者層の文学的嗜好の間の複雑な関係を反映している点など大局的に共通する部分も見られる。 加えて、今後、個別の写本ごとの特徴と全体に共通する性質の両面からLydgateの華麗文体受容を分析するために、関連する他の写本資料のリスト化を行い、所蔵館での現地調査のための準備を行った。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)