2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J08050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平出 秀人 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | laccase / compression wood / lignin |
Outline of Annual Research Achievements |
スギ組換え系統の不定胚形成細胞から胚を誘導して発芽させ、高さ3 cm程度の幼木まで生育した。このときにはすでに肥大成長を始めており、傾斜した幹から切片をとって観察すると圧縮あて材の形成が見られた。組換え体と非組換え体(wild type)で圧縮あて材細胞壁に違いが現れることを期待したが、フロログルシン塩酸反応と自家蛍光によって簡単にリグニン分布を観察した段階では、S2Lの幅やリグニン濃度などに関して両者に違いは見られなかった。 そこで詳細な調査を行う前に、まずRNAiによるCjLac1の発現抑制がどの程度効いているのかを評価することにした。圧縮あて材を作る幹からmRNAを抽出して、定量的・逆転写PCRによって発現レベルを評価した。組換え系統では非組換え体(wild type)と比較して発現レベルが低下する傾向が見られたが、再現性の検討を含めてより正確に評価を行う必要がある。 スギ組換え体によるCjLac1の機能解析と並行して、ヒノキラッカーゼCoLac1の基質特異性について検討した。蛍光標識モノリグノールを用いて、ヒノキ圧縮あて材の木化中の各壁層において、コニフェリルアルコール(Gモノマー)とp-クマリルアルコール(Hモノマー)の酸化重合活性を可視化した。その結果、コニフェリルアルコール(Gモノマー)の酸化重合活性は、木化中S1層とS2層で高く、S2Lでは比較的低かった。逆に、p-クマリルアルコール(Hモノマー)の酸化重合活性は、木化中S2Lで高く、その他の壁層では明らかに低かった。このことから、ヒノキ圧縮あて材のS2Lに局在するラッカーゼ(CoLac1)は、p-クマリルアルコールへの特異性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
得られた組換え系統のゲノムにコンストラクト(RNAi trigger配列および薬剤耐性遺伝子 )が導入されていることをPCRによって確認した。しかしながら、光学顕微鏡によって圧縮あて材仮道管を観察したところ、wild typeと比較して組織形態に違いは見られなかった。また、組換え体ではCjLac1の発現量が減少する傾向が見られたものの、顕著な発現抑制は確認できていない。現状では、RNAi trigger配列が予想通り発現していない可能性も高く、まず発現抑制についての評価をする必要がある。 また、現在タバコBY-2細胞を用いてリコンビナントラッカーゼ(CoLac1およびその他のヒノキ由来ラッカーゼ)を調製し、その基質特異性について調査中である。結果がまとまり次第、論文にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
組換え系統では非組換え体(wild type)と比較して発現レベルが低下する傾向が見られたが、再現性の検討を含めてより正確に評価を行う必要がある。今後は、まず組換え系統においてCjlac1の発現レベルを評価した後、発現抑制が見られる系統において細胞壁のリグニン分布を詳細に調べる予定である。 ヒノキラッカーゼCoLac1の基質特異性については、現在タバコBY-2細胞を用いてリコンビナントラッカーゼ(CoLac1およびその他のヒノキ由来ラッカーゼ)を調製し、その基質特異性について調査中である。結果がまとまり次第、論文にまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)