2017 Fiscal Year Annual Research Report
製造要件を考慮した最適形状創成設計法に基づく一気通貫型設計生産法の開発
Project/Area Number |
17J08185
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 勇気 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 最適設計 / 生産工学 / 計算科学 / トポロジー最適化 / CAE / 製造要件 / 鋳造 / フライス加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、製造工程における多様な要件を考慮した最適形状創成設計法の開発を目的として、製造性に起因する幾何学的な制約付きのトポロジー最適化手法を構築する。このような方法論が確立されれば、高性能かつ製造可能な最適設計解の創成が可能となり、これまでに開発された様々な高機能デバイスの構想設計法の産業展開が期待できる。 本年度は、まず鋳造や樹脂射出成形等の型を用いた製造方法を対象として、幾何学的制約を考慮したトポロジー最適化手法の構築を行った。この方法では、制約を表現するための仮想的な現象を考え、その現象に対応する仮想的な物理モデルを介して幾何学的制約を最適化の方法論に組み込む。具体的な実施内容としては、まず幾何学的要件を明確化し、その要件を表現するための仮想的な物理モデルを移流拡散方程式に基づき構築した。次に、構築した物理モデルを元に、最適化問題の定式化、最適化アルゴリズムの開発及び数値実装を行った。その後、ベンチマーク問題に対して最適化を行い、構築した方法論の妥当性及び有効性を検証した。さらに、フライス加工の製造要件と型を用いた製造方法における製造要件の類似性に着目し、前述の方法論をフライス加工における製造要件も考慮できるよう拡張した。本手法は幾何学的制約も実現象と同様に物理モデルを介して扱うため、従来のCAEとの親和性が高く、将来的に産業界への展開が容易になることも期待される。一方で、設計段階から、製造・生産までを一気通貫で考慮するためには、製造性だけでなく製造段階において生じる形状の不確定性も考慮に入れる必要がある。そこで、次年度に幾何学的な不確定性に対する信頼性も考慮可能なトポロジー最適化の方法論を構築することを目的とし、本年度はその基礎的な検討を行った。こちらの研究では、形状の変動をオイラー座標系で表す方法を提案し、二次元ベンチマーク問題を通して手法の妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トポロジー最適化は、抜本的な形状変化を許容する性質上、製造困難、あるいは不可能な最適設計解が得られる場合が多い。そのため、得られた最適形状をそのまま採用することは難しく、開発期間の大幅な短縮を可能とするトポロジー最適化手法の利点が十分に発揮されていなかった。これに対し、本年度は幾何学的な制約を与える方法を開発することで、従来の方法と比べて実現性の高い最適形状を得ることに成功した。さらに、幾何学的制約を仮想的な物理モデルにより陰的に表現することで、設計空間を制限することなく幾何学的制約を実現した。すなわち、最適構造においては制約が満たされるものの、最適化の過程では制約違反を許容することにより、初期構造依存性の低い幾何学的制約を実現することに成功した。また、今年度後半には、製造性に留まらず、製造段階において生じる幾何学的な不確定性に対する信頼性を考慮した方法論の構築にも着手した。こちらに関してもすでに基礎的な検討は完了していることから、次年度に信頼性に基づく方法論を完成させ、幾何学的な制約と組み合わせることで、最終的に設計から製造・生産までを考慮した最適形状創成設計のための方法論として完成させることは十分に可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した方法論は、製造の前段階として製造性を考慮するものであった。今後は、さらに下流の工程である、製造時に生じる幾何学的な不確定性を考慮した最適形状創成設計手法の方法論を構築する。今年度後半には、形状の変動をオイラー座標系で表す方法を提案し、形状変動を考慮した最適化問題の定式化、最適化アルゴリズムの構築、及び数値実装を行った。その後、ベンチマーク問題として二次元剛性最大化問題に適用し、構築した手法の妥当性を検証した。その結果、高い信頼性を要求する構造ほど、ひずみの集中する部分を補強し、かつ多数の梁構造から構成される最適構造が得られ、概ね良好な結果が得られたと言えるが、計算コスト面での課題が明らかとなった。これは、現在のアルゴリズムが信頼性解析のための内部ループと、設計変数、すなわち形状の更新のための外部ループから成る二重ループの構成になっているためであり、今後三次元問題へと展開していく際の課題となる。そこで次年度には、本手法の三次元問題への適用を容易にするため、計算コストの削減行う。そのために、現在二重ループで構成されている最適化アルゴリズムの単ループ化に取り組む予定である。
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