2017 Fiscal Year Annual Research Report
土方巽の暗黒舞踏における「東北」ーパースの記号論的観点に即してー
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17J08239
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 裁仁 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 土方巽 / 暗黒舞踏 / 舞踏 / 舞踊 / ダンス / 身体 / 表現 / 芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の前衛ダンスとして知られる「暗黒舞踏」(以下「舞踏))の創始者である土方巽(1928-86)を取り上げ、従来「東北的」とされてきた土方の舞踏の身振りを一つの記号として理解し、後期舞踏作品における「東北」の持つ様々な意味を捉え直すものである。 平成29年度前半には、6月に日本舞踊学会例会研究会(東京)において「土方巽の「暗黒舞踏」おける肉体熟視に関する考察--「なる」技法における「衰弱体」を手がかりに--」というタイトルで、研究発表を行った。6月にさらに、ハンガリーでの学会、「身体意識と芸術Thematic Programs on Somaesthetics, Body Consciousness and the Arts」(ハンガリー・ギヨル)と、「美学、倫理学、政治学の核心としての身体The Soma as the Core of Aesthetics, Ethics and Politics」(ハンガリー・ゼゲド)に参加し、身体とダンスについての研究と日本国外のダンス研究者との交流を行った。 平成29年度の後半には、9月に、私の研究対象の土方巽の故郷であり、彼の後期作品活動のモチーフとなった秋田を訪問し、ワークショップや鎌鼬美術館の祭りに参加するなど、調査研究を行った。11月には、日本演劇学会研究集会(愛媛)において「土方巽の「暗黒舞踏」における身体と表現」というタイトルで研究発表を行った。 平成30年の1月には、韓国の梨花女子大学で行われたダンス&メディア研究所の「コロキウム」発表会に参加し、韓国のダンス研究者との交流を通じて韓国におけるダンス研究の動向について調査研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本舞踊学会例会研究会(平成29年6月・東京)において行った発表「土方巽の「暗黒舞踏」おける肉体熟視に関する考察--「なる」技法における「衰弱体」を手がかりに--」は、舞踏の「東北的」と呼ばれてきた動きの諸要素の中で「なる」という技法と土方の「衰弱体」思想ついての研究成果であった。「なる」技法は、私の研究課題にとってとりわけ重要な手がかりの研究対象としてみなされるため、今度の舞踊学会への参加は、本研究の基礎づけとしての発表となった。さらに、発表会での様々な舞踊研究家たちとの交流は、土方巽研究を含め、他のジャンルの舞踊研究の動向についての知識を広げる機会となったと思われる。 平成29年度の後半に行われた、日本演劇学会研究集会(平成29年11月・愛媛)での発表、「土方巽の「暗黒舞踏」における身体と表現」は、土方の舞踏に現れる表現の独自性について検討したものの発表であり、演劇とダンスという舞台芸術における身体と表現の関係についての考察を促すものであった。発表の後には、懇親会で若手研究者たちとの交流を行った。演劇学会の懇親会には、舞踊の研究者より演劇の研究者の方がはるかに多いため、異なる舞台芸術分野の研究動向について見聞を広める場となった。同じ舞台芸術の他の研究視点について考察できる良い機会となったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
土方の後期舞踏作品に見られる「東北」的な要素を当時の舞踏評論や論文を検討することで見出す。さらに、単なる文献調査にとどまらず、実際の舞踏公演を見学しに東北へ訪れ、研究資料として動画や写真をとってくることも予定している。そして、1年目の研究成果を生かしつつ、ダンス記号概念を舞踏における「東北」的な特質に当てはめることを試み、申請者独自の新しい舞踏解釈の枠組みを構築する。この研究をまとめるにあたり、ダンス研究の権威であるイェールダンス研究所とコンタクトを取り、研究交流を目的として14日間のアメリカへの渡航を希望する。この最終的な成果は論文として提出するが、この成果の一部についてアメリカダンス学会(CORD、10月、アメリカ)で口頭発表を行い、それを国際ジャーナルへ投稿する。またそのほかに、演劇学会全国大会(6月、関西)、美学会全国大会(10月、関西)へ参加する。
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Research Products
(2 results)