2017 Fiscal Year Annual Research Report
微生物におけるCoA生合成に関与する新規機能分子の同定
Project/Area Number |
17J08246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下坂 天洋 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 超好熱菌 / Coenzyme A / 生合成 / 代謝 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はアーキアにおいて未同定であったCoA生合成の最終段階を触媒するdephospho-CoA kinase (DPCK) の同定をおこなう為に、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisにおいてDPCKの同定を試みた。まず始めに、T. kodakarensisが有する二つの推定DPCK遺伝子の解析をおこなった。これらの組換え型タンパク質はDPCK活性を示さなかったことからT. kodakarensisが新規のDPCKを有することが示唆された。近年のメタゲノム解析により、さまざまな環境中の微生物のゲノム情報が蓄積されてきている。そこで、これまでに得られているアーキアのメタゲノム情報をもとに新規DPCKの探索をおこなった。その結果、CoA生合成酵素の一つである遺伝子と融合して存在する機能未知遺伝子が多くのアーキアにおいて発見された。このような遺伝子の融合は、融合している遺伝子同士の機能的な関連を示唆することがある。そこで機能未知遺伝子がアーキアにおける新規DPCKであると推測し解析をおこなった。T. kodakarensisにおいて、これらの遺伝子は融合しておらず、それぞれ単独でゲノム上に存在する。メタゲノム情報の解析から発見されたDPCK候補遺伝子を大腸菌内で大量発現させ、組換え型タンパク質を調製した。調整した組換え型タンパク質を用いてDPCK活性の検討をおこなったところ、DPCK活性が検出された。続いて生理学的解析をおこなう為にT. kodakarensis DPCK遺伝子破壊株を作製し、生育測定をおこなった。生育測定の結果DPCK遺伝子破壊株はCoA要求性を示し、DPCK遺伝子のT. kodakarensis生体内におけるCoA生合成への寄与が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はアーキアにおけるDPCKを同定する為に、メタゲノム情報を利用し新規DPCKの探索をおこなった。その結果、超好熱性アーキアT. kodakarensisにおいて既知のDPCKとは相同性を示さない新規DPCKを同定した。さらにT. kodakarensisにおいてこれまでに解析がおこなわれていなかったCoA生合成遺伝子についても解析をおこない、これらの遺伝子破壊株もCoA要求性を示すことを明らかにした。これらの結果により、T. kodakarensisにおけるCoA生合成の全容が解明された。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究においてT. kodakarensisが有する新規DPCKを同定した。その過程においてT. kodakarenisが有する二つの推定DPCKがDPCK活性を有さないことが明らかとなった。そこでこれらの遺伝子の真の役割の解明を試みる。また、T. kodakarensis DPCK遺伝子破壊株がCoA要求性を示したことから、T. kodakarensisは培地中に存在するCoAまたはその熱分解物を取り込むことが示唆された。そこでCoAの熱分解により生じる分子を、HPLCなどを用い分離し、遺伝子破壊の影響を相補する分子を同定する。また、ゲノム情報を利用しCoAの生体内取り込みに関与すると推定される遺伝子や、機能未知な推定トランスポーター遺伝子の破壊によりCoA取り込み機構の解明を目指す。
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