2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Life Expectancy of Big Firms in Post-War Japan
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17J08319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朱 玄礫 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 戦後日本経済史 / 組織生態 / 産業組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、計画通りに研究対象である戦後日本上場企業の基本状況と財務に関するデータの収集および企業データベースの作成に集中した。日本政策銀行企業財務データベースおよび日経上場企業財務データベースを主として利用したが、これら資料には戦後初期の1950年代における企業について多くの欠落が見られ、特に上場廃止企業については極一部しか収録されていない。したがって、新たに戦後上場企業の有価証券報告書を利用することで、該当時期の欠損データを収集し、現存のデータベースの補完作業を進めた。また、作成したデータベースは戦後80年に渡る企業の長期データであるため、該当期間中に会計基準や証券取引所のルールの変更、企業の合併や業種変更などが多数存在しており、時系列方向の整合性が損なわれている。そのため、これらの問題に逐一対処することで、パネルデータとして統計解析に利用可能なデータベースを構築した。 また研究を進める中で、戦後大企業の組織生存や経営活動に多大な影響を与えた戦後の日本国内市場における競争状態、いわゆる産業組織論の面から改めて戦後日本大企業の実態を認識する必要性を強く感じた。この問題意識を踏まえ、戦後日本市場競争・企業競争に関わる、特に戦後日本特有の過剰競争と行政指導が併存した市場競争状態を説明する様々な経済理論と実証分析に関する文献をサーベイした。その結果、既存理論間における矛盾や既存理論と実証研究結果の不一致が散見された。さらに、本研究が焦点を当てている日本企業の長期安定的な長寿化を説明できる理論は未だ構築されていないことが明らかとなった。したがって、産業組織に関する最新の理論と実証分析手法を上述のデータベースに応用することで、戦後日本市場の競争状況の変遷と企業生存状況、経営戦略との関連性および因果性を明らかにすべく研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一つの理由は、現有の戦後日本上場企業のデータベースにおける収録範囲は予想以上に限られているため、戦後初期と高度成長前期に上場廃止した企業の財務データや経営情報のデータ化作業は計画以上の時間をかかった。もう一つの理由は、戦後大企業の生存状況や経営環境を研究するために、計画した組織経済学の理論以外に、産業組織論の角度から市場競争状況を認識する必要性を感じ、産業組織経済学における既存理論および実証分析手法を勉強したため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今まで収集整理したデータベースを基に、1)組織生態学における複数の組織群生存率の論証を日本企業のケースから検証することと、2)産業組織論における産業集中度、企業利潤率、企業参入退出状況から戦後日本国内市場競争状況を検証することを予定する。また行ってきた二つの実証研究を、国内外の学会やワークショップの発表や議論等を通して、研究内容を改善し、研究結果を一定的に理論化し、別々の論文として仕上げ国内と国際学術雑誌に投稿する。 また、戦後日本市場全体に対する実証分析と理論構築の下で、個別産業や企業群における競争環境・生存状況・経営戦略への検証に着手し、論証を立体化する。
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