2018 Fiscal Year Annual Research Report
パラメトリックスピーカの新たな測定概念を応用した3次元音場再現システムの開発
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17J08324
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 彬子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | パラメトリックスピーカ / 超音波 / 音響特性 / 計測手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
建築材料の音響特性を高精度に計測し、3次元の音響シミュレーションシステムを開発するという最終目標に向けて、鋭い放射指向性をもつパラメトリックスピーカを音源として用いた計測手法の開発を行っている。その狭指向性により音波を材料に局所的に入射することで、不要な反射や回折の影響を回避した高精度な計測手法として期待される。 パラメトリックスピーカを用いて可聴音を計測する際には、音源信号として用いる高音圧な超音波が擬音とよばれる局所歪を引き起こし、誤差要因となる。擬音による計測誤差を低減するためには、受音点付近で超音波を低減する必要がある。2017年度には、音源信号として位相反転信号を用いる信号処理的な制御、及びフォノニック結晶と呼ばれる物理フィルタを用いた構造的な制御によりこの課題を解決した。2018年度には、斜め入射吸音特性の計測に、提案手法を応用した。斜め入射吸音特性は、材料の端部回折や周壁からの反射等の影響を受けやすく、その計測の困難さから未だ一般化された計測手法が存在しない。しかし、パラメトリックスピーカの狭指向性はこの問題に有効であると期待された。2017年度の検討を踏まえて斜め入射吸音特性の計測を行ったところ、精度のよい計測ができた。また、位相反転駆動方式では、超音波の低減領域が非常に狭く、特に入射角が大きい場合で受音点をその領域内に設置することが困難であった。しかし、その駆動方式に更なる改良を加えた結果、どの角度においても精度よく測定を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度には、音源信号の駆動方式の工夫、およびフォノニック結晶と呼ばれるバンドギャップフィルタを用いた構造的な制御により、パラメトリックスピーカを用いる際に高音圧な超音波が引き起こす「擬音」の問題を解決した。2018年度は、前年度の知見をふまえて、斜め入射吸音特性の計測を行い、提案手法により精度よく測定ができることを示した。また、音源信号の駆動方式にさらなる改良を加えることによって、さらに測定精度を改善することができた。ここまでの計測をまとめて雑誌論文とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の検討により、擬音に起因する誤差を低減する手法を用いて、斜め入射時の材料の吸音特性が精度よく計測できることがわかった。しかし、800Hz以下の帯域の精度の更なる改善が必要である。その原因として、材料と音源の幾何的関係、および音源の周波数特性に着目し、2019年度は差分法を用いた非線形数値解析及び実験による検討を進める予定である。それらの検討をふまえ、測定可能領域や暗騒音レベルなど、計測手法の適用範囲を整理する予定である。
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Research Products
(5 results)