2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J08438
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Research Fellow |
谷岡 優子 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 芸者 / 花街 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度、「1990年代‐2010年代において花街空間を構成する施設、機関はどのように変化したか」「現代の地方都市を拠点に活動する芸者の労働形態はどのようなものか」に注目して調査を行い、愛媛県松山市の花柳界と、秋田県秋田市・湯沢市の花柳界を中心に現地調査を行った。また、調査の一環として、2017年10月にアメリカのNYで開催された「花あかりオーケストラ」、福井県で開催された「花あかり」への参与観察を行い、 (1)花街空間を構成する施設の減少とその要因、(2)芸者の労働形態の多様化、2点の成果が得られた。 (1)現在百年以上の歴史を有する料亭は全国に約130軒存在しているが、その多くが戦時下の空襲や塩害、台風、大雪等の影響で建造物をリフォームし、花街建築の特徴を有するものが減少している。さらに上記の戦災や天候の影響だけでなく、建造物の修理の際に使用した木材の質の低下、釘や鉄骨の使用により建造物の耐久年が著しく低下したといわれている。現在、上記の建造物の管理維持が難しくなったこと、後継者不足を理由に閉業するものも増加し、2016年‐2017年の間に百年以上の歴史を有する料亭が3軒閉業している。料亭組合が解散し影響力が少ない現在、芸者が営業する「場」は茶屋、料亭のみならず、ホテルや旅館の宴会場が増え、参加人数や会場の面積が大規模と化し、これが芸者の芸にも影響を与えている。 (2)芸者の労働形態は、芸者自身の方針は勿論だが、花街の構成要素、所属人数のほか、特に芸者を養成し営業を支援する組織の方針によって大きく変化するといえる。現在営業する全国の芸者を大まかに分けると、置屋(検番)所属の芸者か料亭所属の芸者、会社組織所属の芸者、その他の4つに分類できる。これらの所属組織の運用が生む労働環境の差異については研究報告書としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年9月に当該テーマを主に社会学の方法論を用いて研究を進めることにしたため、受入研究者の変更を行った。この変更により2017年度は研究状況(特に得られた研究成果の分析、研究成果の報告)に遅行がみられた。 しかし、現地調査は継続して行っており、当事者である芸者や芸者の芸を維持するために必要な「花街」を存立させる機関・施設の関係者の聞き取り調査や参与観察を実施しており、これまでに得られた調査成果を調査協力者らと共有し、意見交換を行いながら論文化に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、「1990年代‐2010年代において花街空間を構成する施設、機関はどのように変化したか」「現代の地方都市を拠点に活動する芸者の労働形態はどのようなものか」に主眼を置き、調査をすすめてきた。2018年度はこの問題関心を継続し、さらに深化させたうえで現地調査をすすめていきたい。 また、2018年4月から調査地の一つである松山市の花柳界では、現代の芸者と芸者を支える機関の働き方を変える革新的な労働改革がすすめられている。この労働改革では芸者の労働にかかる情報処理にテクノロジーが積極的に利用されているため、申請者が参加している国立民族学博物館共同研究【若手】「テクノロジー利用を伴う身体技法に関する学際的研究」で得られた知見を交えながら、報告をすすめていきたいと考える。 本年度は、研究の最終年度であることを加味して、現地調査と並行しながら、研究開始年から今年度までに得られたデータの整理を行い、研究の総括をすすめていきたい。
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