2018 Fiscal Year Annual Research Report
高出力・高ビーム品質フォトニック結晶レーザの実現に関する研究
Project/Area Number |
17J08502
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 昌宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 半導体レーザ / フォトニック結晶 / フォトニック結晶レーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の半導体レーザは高ビーム品質を保ったままでの高出力化(すなわち,高輝度化)が困難であり,レーザによる材料加工や長距離・高分解能なセンシング(LiDAR等)などへの応用が制限されている.本研究では,フォトニック結晶をレーザ共振器として利用した高出力・高ビーム品質フォトニック結晶レーザを開発することで,従来の限界を打破し,上記を含む幅広い応用への展開を可能とする新たな半導体レーザ光源の実現を目的としている. 本年度は,昨年度までの検討に基づき,フォトニック結晶レーザの高出力・高ビーム品質化を実現するために,より大面積においても基本モード単一での動作を可能とし,ビーム品質を劣化させる高次モードの発振を抑制できる新たなフォトニック結晶共振器である“二重格子点フォトニック結晶共振器”を導入した大面積レーザデバイスを開発した.そして,直径500~800um(従来の5~10倍)のデバイスサイズでの大面積コヒーレント発振を実現し,高ビーム品質かつ10W級の高出力動作(パルス駆動)の実証に成功した.さらに,デバイス裏面への反射鏡の導入による出力効率の向上と,放熱性を考慮した実装技術の検討により,連続駆動においても,7Wに迫る高出力動作に成功した.これらの成果は,従来の半導体レーザの高出力・高ビーム品質化の壁を打ち破るものとして,英学術誌Nature Materialsに掲載されるとともに,二重格子フォトニック結晶共振器がその表紙に採用された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フォトニック結晶レーザの高出力・高ビーム品質化を実現するためには,より大面積においても,ビーム品質の劣化を招く高次の共振モードの発振を抑制し,基本モードでの発振を維持することが重要となる.昨年度まで,直径500~800umという従来の5~10倍の大面積でも単一モード発振が期待できる独自の“二重格子フォトニック結晶共振器”の設計と,その作製法の開発を行ってきた. 本年度は,その結果に基づき,実際に大面積デバイスを開発し,大面積コヒーレント発振を実現し,高ビーム品質かつ10W級の高出力動作(パルス駆動)の実証に成功した.本レーザは,0.3度以下という極めて狭い拡がり角をもつビームを半導体レーザから直接出射できるという,他の半導体レーザにはないユニークな特長を有しており,コリメートレンズなどの複雑な外部光学系を必要としないコンパクトなセンシングシステムの実現に寄与するものと期待できる.さらに,デバイス裏面への反射鏡の導入による出力効率の向上と,放熱性を考慮した実装技術の検討により,連続駆動においても,7Wに迫る高出力動作に成功した. 以上の成果は,従来の半導体レーザの高出力・高ビーム品質化の壁を打ち破るものとして,学術的・産業的に重要であるといえ,英学術誌Nature Materialsに掲載されるとともに,二重格子フォトニック結晶共振器がその表紙に採用された.さらに,より一層の高輝度化のための指針をも見出しつつあることから,当初の計画以上に研究が進展しているものと自己評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度までの進展を土台として,二重格子フォトニック結晶共振器の深化・最適化を軸として,より一層の高輝度化に向けて,研究を展開していく.具体的な方針として,二重格子構造において,これまで着目してきた180度方向の打ち消し合いに加えて,新たに90度回折との打ち消し合いをも利用することにより,直径1mmを超える超大面積デバイスにおける基本モード動作の実現を目指す. また,上記の検討に加えて,共振器構造の最適化のみならず,そのような大面積レーザデバイスに電流を注入する際に,基本モード動作に有利となるような意図的な面内注入分布を与えるといった,新たなアプローチについても検討する.半導体デバイスシミュレータ等を用いて,所望の電流注入分布を与えるための電極形状の設計を行い,設計した電極を実際に作製するための作製法の検討を行う. さらに,裏面反射構造の更なる詳細検討やエピ構造の最適化にも取り組み,より一層の出力効率の向上についても検討する. 以上のように,これまでの検討を基礎として,それを発展させることにより,フォトニック結晶レーザの更なる高出力・高ビーム品質化を目指す.
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Research Products
(22 results)