2017 Fiscal Year Annual Research Report
Dialetheism about Ineffability
Project/Area Number |
17J08700
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山森 真衣子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 自己言及のパラドクス / 哲学的自己言及のパラドクスの共通構造 / 哲学的自己言及のパラドクスの対応策とそのコスト |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は「語り得ぬもののパラドクス」について、そのパラドクスの構造を提示し、そのパラドクスを回避する方法を考察する予定であった。しかし研究を進めるにつれ、「語り得ぬもののパラドクス」だけでなく、そのパラドクスと同じ形式に属するであろうパラドクスにも共通する構造の提示・解決方法の考察を行うことで、より一般性の高い研究をするほうがよいという考えに至った。 パラドクスは「『正しそうな前提』と『正しそうな推論』から『受け入れがたい結論』が導出される」という困難である。そのうち、「正しそうな前提」なしで(「正しそうな推論」のみから)「受け入れがたい結論」が導出されるような、前提に依存しないパラドクスを「論理的パラドクス」、「受け入れがたい結論」を導出するのに「正しそうな前提」(と「正しそうな推論」)を必要とするパラドクスを「哲学的パラドクス」と呼ぶことにする。 また、論理的パラドクス・哲学的パラドクス両方に共通するパラドクスとして、自分自身に言及する構造に関わるパラドクスである「自己言及のパラドクス」がある。(そのため「論理的自己言及のパラドクス」「哲学的自己言及のパラドクス」の区別がある。) 「語り得ぬもののパラドクス」は「哲学的自己言及のパラドクス」である。そこで、私の研究は、「哲学的自己言及のパラドクスに共通する構造の提示」と「哲学的自己言及のパラドクスに共通の対応策と、その対応策をとる論理学的・哲学的コスト」を考察するというものになった。 本年度は、「論理的自己言及のパラドクス」の共通構造を提示している先行研究を批判しつつ、それら先行研究を参考にして「哲学的自己言及のパラドクス」の共通構造を考察し、おおよその目処をつけた。また、語り得ぬもののパラドクスへの対応策をいくつか列挙し、その対応策をとる際に払うコストを見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「語り得ぬもののパラドクス」だけでなく、「哲学的自己言及のパラドクス一般」への研究へと拡大したため研究の進展が遅くなったと考えられるかもしれない。しかし実際は、「哲学的自己言及のパラドクスを表現する共通構造の提示」に関しては、おおよその目処をつけることができた。今後は細部の調整を行う。また、「哲学的自己言及のパラドクスの共通の対応策の列挙とそのコストの見積もり」については、少なくとも四つの推論規則について、それを制限することがその対応策となることを明らかにし、それぞれの推論規則を制限することがどのようなリスクに繋がるかを明らかにした。以上のように、研究はおおむね順調に進呈している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で「哲学的自己言及のパラドクスの一般構造」についておおよその目処がついている。そこで今後は、その構造の細部の調整を行う。 そこで入手できた「一般構造」を元にして、「哲学的自己言及のパラドクスに共通の対応策」を考察し、その対応策を採用することで支払わねばならない論理学的・哲学的コストを明らかにする。上述のように、現在までで四つの推論規則について考察しているため、新たに考えなければならない推論規則はそれほど多くないと考えられる。
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Research Products
(4 results)