2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規バイオデバイス構築に向けた酵素電極界面電子移動へのタンパク質工学的アプローチ
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17J08760
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日比野 佑哉 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 直接電子移動 / フルクトース脱水素酵素 / 変異導入 / バイオ電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化還元酵素と電極が直接反応する直接電子移動(DET)型反応は,デバイスへの展開において種々のメリットを持つ.一方で,酵素の安定性や電流密度の低さが原因で実用化には至っていない.そこで本研究は,DET型触媒活性が非常に高い酢酸菌由来の膜結合型酵素であるフルクトース脱水素酵素(FDH)に注目し,実用化に向けた酵素の改良と,反応メカニズムの解明を目指した. 平成29年度は,変異導入によるモデル酵素の高性能化に取り組んだ.DET型触媒反応は酵素が電極上に吸着し,電子が酵素内部の酸化還元中心(コファクター)から電極へと移動することで進行する.また酵素の大きさは一般にnmオーダーで,一般的な無機触媒に比べ非常に大きい.それゆえ,無機触媒に比べて酵素の電極表面への単位面積当たりの吸着量は小さくなり,低電流密度の一因となっている.そこで,酸化還元電位を変化させることでより低い電極電位でのフルクトース酸化を図るコファクターへの部位特異的変異と,酵素サイズの縮小による単位面積あたりの吸着量上昇に伴う電流密度の上昇を図る部位欠損変異を同時にFDHに導入した.その結果,従来に比べ1.3倍高い電流密度と,およそ0.15V低い電極電位でのDET型触媒反応という性質を併せ持った変異体の構築に成功した.両性質は,バイオ電池に応用した場合出力の向上に繋がるものであり,応用面できわめて有用といえる.一方で,酵素の安定性は著しく低下した.測定時の温度や緩衝液のpHの検討を行ったが,安定性の改善は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,酵素-電極間電子移動反応律速の解消を目指して,2種類の変異体を作製する予定であった.しかし,片方は変異体の構築自体には成功し,酵素活性も保持していたものの,期待した特性の変化の観察には至らなかった.また,もう片方については変異体をデザインする前段階としてFDHのX線結晶構造解析に取り組んでいたが,こちらも期待した成果を得るには至らなかった. そこで,これら変異体で酵素の性能向上を実現した後に行う予定であった,独立した複数の変異を同時に導入する試みについて,実験を行った.その結果,酵素の性能を飛躍的に向上させることに成功した. 本研究の目的は,実用化に向けたモデル酵素の改良と,反応メカニズムの解明である.目的達成のための戦略の一部は実現に至らなかったものの,一定の進展を見せているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,作製した変異体の特性評価を行う.DET型触媒反応は酵素の反応速度定数とコファクターの酸化還元電位以外にも,酵素の単位面積当たりの吸着量,コファクターと酵素表面の距離,酵素が電極表面に吸着する向きといった要素に支配される.これまでDET型反応の実用化において有用な変異体を複数構築した.しかし,それらの評価は定性的なものにとどまっており,各変異導入によるこれらの要素への寄与の定量的な評価には至っていない.そこで,電極上に吸着した酵素をモデル化しDET型触媒反応を速度論的に解析することで,変異導入がDET型反応に与えた影響をより詳しく検討する予定である. また,作製した変異体は従来のFDHに比べ,より速度論的解析に適した性質をもつことが示唆されている.そこで,この変異体を用いてさらに膜結合型酵素の電極表面への吸着特性についての研究を予定している.
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Research Products
(4 results)