2017 Fiscal Year Annual Research Report
長寿命核分裂生成物の回収を目指した溶融塩中におけるガラス固化体の電解還元
Project/Area Number |
17J08901
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片所 優宇美 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 原子力発電 / 長寿命核分裂生成物 / 溶融塩電解 / ガラス固化体 / 電解還元 / 多元素分析 / 高温電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、原子力発電に伴い発生する放射性廃棄物は、ガラス固化体にして深地層処分することになっている。ガラス固化体中には長寿命核分裂生成物(LLFP: Long-lived fission product)が含まれており、中には半減期が長くなければレアメタルとして有用な元素も含まれている。そこで、LLFPを分離回収し、短半減期核種や安定核種に核変換し、放射性廃棄物を削減・資源化するプロセスの開発が行われている。本研究では、ガラス固化体からLLFP(Cs、Zr、Pd、Se)を分離回収する技術の開発を行った。そのままでは、LLFPはSi-O網目構造中に閉じ込められており分離回収が難しいため、溶融塩電解法により網目構造を破壊することを試みた。本手法はこれまで研究例がないため、まず初めに、電解還元が可能な条件の検討を行い、次に、実プロセスに近い形で電解還元を行ったときのLLFP4元素の挙動の把握を行った。本研究では、ガラス固化体とほぼ同じ成分で安定同位体のみから成る「模擬ガラス固化体」を用いた。 まず、少量のガラスを種々の電位で電解した。その結果、1.1 Vより卑な電位で、還元可能なことを明らかにした。次に、還元するガラスの量を増やして長時間電解を行い、ガラス中の各元素の挙動(溶融塩中にイオンとして溶出、一部溶出、固体中に残留、等)を明らかにした。LLFP4元素については、Csが溶融塩へ溶出、ZrおよびPdが固体中に残存、Seが一部溶出(長時間電解で系外へ揮発)、ということが分かった。 以上より、ガラス固化体を電解還元可能な条件および、LLFP4元素の挙動を明らかにし、後続プロセスでの単離方法の指針を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、実際のガラス固化体とほぼ同じ組成の「模擬ガラス固化体」の電解還元挙動について検討を行った。すでに平成28年度の研究で、申請時の計画で実施予定であった「模擬ガラス1」(ガラス成分のみ)および「模擬ガラス2」(ガラス成分+LLFP 4成分(Cs, Se, Pd, Zr))の還元挙動について、還元に最適なガラス粒径と添加塩量、および本研究で対象としているLLFP 4元素の挙動が明らかになっていた。これらの結果にもとづき、平成29年度は、まず、模擬ガラス固化体が電解還元可能であることを示し、LLFP 4元素の挙動が、模擬ガラス2と同様であることを明らかにした。また、還元するガラスの量を増やした実プロセスに近い形での実験と、その際のLLFP 4元素の挙動の把握に成功した。さらに、本研究の基礎となっているSiO2直接電解還元反応のin-situ実験にも取り組んだ。これらは、申請時の計画以上の研究成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の基礎となっているSiO2直接電解還元反応のin-situ実験結果の解析を行う。また、ノルウェー科学技術大学での研究により、本研究の基礎となっているSiO2直接電解還元反応のアノード反応の解析を行い、得られた成果をもとに、反応メカニズムに関するさらなる検討を行う。
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