2019 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物群集構造の決定要因は何か: 哺乳動物垂直分布をボトムアップ効果で説明する
Project/Area Number |
17J08920
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長野 秀美 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2021-03-31
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Keywords | 哺乳動物群集 / 熱帯山地林 / 垂直分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マレーシア、ボルネオ島キナバル山の熱帯山地原生林に生息する中・大型哺乳動物が標高に沿ってどのように分布しているのかを解明し、その分布と餌資源の分布との関係を明らかにするのが目的である。一昨年度に、キナバル公園内の標高700m, 1700m, 2700m, 3100mの蛇紋岩層、堆積岩層(1700mのみ第四紀堆積岩 層を追加)の森林に設置した計72台のカメラトラップのデータ回収を昨年度に行った。今年度は、昨年度回収した1年分の動画データの解析を行った。また、今年度も昨年度と同様に、72台のカメラトラップを作動させ、データの収集を行っている。昨年以降のカメラトラップのデータは、来年度以降に回収する。本研究全体で、2年から2年半のカメラトラップデータを得る予定である。小型哺乳動物(リス、ネズミ、ツパイ)の毛のサンプリングについては、今年度は渡航していないため、未採取であるが、来年度以降、まだサンプリングできていない700mの地点で重点的に箱罠を設置して採取する予定である。採取した小型哺乳動物の毛に関して、炭素と窒素に含まれる安定同位体比を測定する予定である。この分析によって、各標高に生息する小型哺乳動物が餌資源として植物性、動物性のどちらを多く利用しているのかを明らかにし、標高に沿ってどのような傾向が見られるのかを解明する。これらの結果から、肉食性の中・大型哺乳動物の餌資源としての小型哺乳動物の標高に沿った分布様式が明らかとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に回収した72台のカメラトラップのデータの解析を行った。また、昨年度に再度同じ調査区内に設置したカメラトラップは、現在も作動中であり、データの収集を行っている。本研究の全期間で、2年から2年半分のカメラトラップデータが得られる予定である。できるだけ長期間カメラトラップを設置してデータ収集することにより、希少な動物の撮影機会を増やすことができ、より信頼性の高いデータを得ることができる。また、季節による哺乳動物群集の変動を加味したデータを得ることも期待できる。小型哺乳動物の毛のサンプリングも標高700m以外の調査区では、すでに採取が完了しているため、次回のカメラトラップのデータ回収時に、標高700mの調査区で重点的に小型哺乳動物用の箱罠の設置を行い、すべての標高でのサンプリングを完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に設置した72台のカメラトラップの回収を行う。本研究全体で約2年から2年半のカメラトラップデータを得る予定である。得られたカメラトラップのデータから、標高傾度に沿った哺乳動物群集について解析を行う。また、カメラトラップ回収時に、3回目の土壌動物調査、小型哺乳動物の毛のサンプリングも行い、十分なサンプルを得る予定である。また、小型哺乳動物の毛、各標高で採取した植物や土壌動物の同位体分析も行う予定である。それらのデータをもとに論文の作成を行う。
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