2017 Fiscal Year Annual Research Report
水平的情報構造が持続可能なエビ養殖業づくりに及ぼす効果分析
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17J08994
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 根雨 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | エビ養殖 / 社会ネットワーク抽出法 / 無作為抽出 / 層化抽出法 / ソーシャル・ ネットワーキング・サービス / 互恵主義 / SNS上の実践コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1. 農業技術セミナーで得られた情報を自分だけのもにするのではなく、隣人にも情報を正確に伝播する伝播者を見つけること、2. 農家同士の情報共有の動機を明らかにすることである。 情報の伝播者を見つけるために筆者はベトナムで社会実験を行った。その結果、以下のことがわかった。1. 社会ネットワーク抽出法で選ばれた処理群は隣人に情報を伝播することに積極的であった。しかし、正確な情報の伝播には効果的ではなかった。2. 無作為抽出で選択された処理群は間接的波及効果が最も高かった。すなわち、無作為抽出法で選択された処理群と同じ村に住んでいる農家の知識水準の向上幅が他の処理群の村より高かった。3. 層化抽出法で選ばれた処理群は情報の伝播には積極的ではなかったが、直接的波及効果が最も高かった。これは層化抽出法で選ばれた処理群が自分の隣人に正しい情報を伝播し、その人たちのエビ養殖に対する知識水準を向上させたことを意味する。 次に農家同士の情報共有の動機に関する研究として、エビ養殖農家が主なメンバーであるSNS上の実践コミュニティを研究対象として選択し、仮想のコミュニティでも現実のコミュニティと同様に互恵主義が情報共有の動機であるかを検証した。その結果、互恵主義が情報共有の動機であることを明らかにした。すなわち、そのコミュニティ上で質問したことがある人が情報の共有にも積極的であり、以前情報を共有したことがある人たちが、質問にも積極的あった。 本研究は水平的情報交換がよく行われていない地域において農業技術を普及する際に参考になるものだと考えられる。また、SNS上の農業技術コミュニティの管理および活性化させるための取り組みの際にも参考できるものだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.隣人に情報を正確に伝播する伝播者を見つけるための研究 ベトナム2016年12月31日、ベトナム国カマウ省でエビ養殖農家を対象に池の水質管理についての知識および水質検査キットの使い方に関するワークショップを開催しました。そのワークショップには、1.無作為抽出、2.層化抽出法、3.社会ネットワーク抽出法で選択された農家が参加しました。2017年に追跡調査を行いました。その調査の目的は上のワークショップから8ヶ月が経った時点で前述の3つのサンプリング・グループの中でどのグループの方がワークショップに参加しなかった農家により積極的に知識共有をしているのかを検証するためのデータを収集することだった。調査は9月上旬に完了しました。 帰国してから調査が完了するまでSurvey Solutionというプログラムを使って調査員のインタビューに対するコメントや質問票の修正などの仕事をしました。その調査で得られたデータを分析してその分析結果に基づいて論文を執筆して博士論文に掲載しました。
2. 農家同士の情報共有の動機を明らかにするための研究 2017年7月、タイのエビ養殖業者たちのコミュニティ・サイ上のデータを収集し、そのデータを研究目的に合わせて分類する作業をしました。その研究の目的はネット上の農業技術コミュニティにおける水平的情報交換の動機を明らかにすることでした。コミュニティ上の投稿内容がタイ語であったため、タイ人を雇い、その投稿を情報共有または質問に分類させました。 そのデータを統計的に分析してネット上の農民コミュニティでの情報交換の動機が現実のコミュニティと同じく利他主義であることを明らかにすることができました。その分析結果に基づいて論文を執筆し、Information & Managementというジャーナルに今年の3月に投稿しました。また、博士論文にもその論文を掲載しました。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成29年度に作成したタイのSNS事例の論文を韓国の韓国世界経済学会、ドイツの社会ビジネス学会に投稿いたしました。韓国世界経済学会での口頭発表は内定をもらっており、今年度の6月に学会に参加し、上記の論文を発表する予定です。そして、今年の2月にInformation & Managementという学術誌に上記の論文を投稿しました。現在、審査中で修正および再投稿になると修正して再投稿しようと思います。次に、平成29年度に作成した抽出法の論文を日本経済学会、米国の農業応用経済学会で口頭発表をしようと思います。農業応用経済学会の方は内定をもらっており、8月に上記の論文をその学会で発表する予定です。そして、今年度中に上記の論文を修正し、学術誌に投稿する予定です。投稿先は未定です。最後に、去年度に私たちがエビ養殖農家を対象にベトナムで行なった社会実験がその農家の社会ネットワークにどのような変化を齎したかを去年度に収集したデータを用いて分析する計画です。そのネットワークの動学的性質を考察するため、今年度中にもう一度その地域で農家の社会ネットワークを調べるための調査をする可能性もあります。
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Research Products
(2 results)