2017 Fiscal Year Annual Research Report
原子層堆積法を用いる多層薄膜超伝導体による加速空洞の高性能化
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17J09072
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
及川 大基 宇都宮大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 超伝導空洞加速 / 多層薄膜超伝導体 / 原子層堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導加速空洞は,素粒子実験に用いる大型加速器や医療用加速器への応用に向けた高性能化が望まれているが,現在ではその材料であるニオブの電気的限界により,性能が頭打ちになっているのが現状である.そのため,加速空洞内表面の超伝導体が持つ高周波に対する臨界磁場を向上させる方法が現在世界中で盛んに研究されている.その一つの方法として,加速空洞内部にナノメートルオーダーの超伝導薄膜を塗布することにより,みかけ上の高周波臨界磁場を向上させることができるという理論が提案されている.しかしながら,ニオブ本来の臨界磁場を超える薄膜超伝導体についてはまだ報告されていないのが現状である.そこで,薄膜超伝導体評価用空洞共振器の設計を行うことにした.
薄膜超伝導体評価用空洞共振器の設計方針として,以下に挙げる点に留意して設計した.(1) 多層薄膜超伝導体に強い高周波磁場を印加することができる.(2) 多層薄膜超伝導体において超伝導破壊が生じたとき,その温度変化を観察することができる.(3) 試験片表面に微粒子やごみが付着しないように,試験片を真空中に置くことができる.(4) 薄膜超伝導体上での磁場強度がそれ以外の部分の磁場強度に対し2倍を超えること.
三次元モデルをもとに,空洞共振器内に励振される電磁場をCST MW STUDIOにより計算した.空洞の共振周波数は5.228 GHzであった.サンプル面には強い高周波磁場が印加され,それ以外では半球部にも磁場が印加される.また,電場は空洞内表面での損失を少なくするため,内表面に電場が印加されない分布になっていることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目はニオブ製マッシュルーム型空洞を模したアルミニウム製マッシュルーム型空洞と共振状態を観測するための測定系を構築し,測定するための手法を確立した.アンテナ形状やビーズ法による測定では,特に励振と検出に多くの改善が必要になったが,測定手法を確立するとともに数値解析結果と比較することで,測定手法の妥当性を検証することができた.この成果は,学・協会誌論文に投稿し,査読中である.このことから,現在までの進捗状況はこの評価でよいのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目はニオブ製マッシュルーム型空洞を製作し,加工精度を評価するとともに,共振条件を評価することで,多層薄膜超伝導サンプルを評価できるようにする.具体的には,多層薄膜超伝導サンプルを原子層堆積法で成膜し,サンプルの表面状態などを観測しながら,表面精度を向上する.ニオブ製マッシュルーム型空洞を用いて,多層薄膜超伝導サンプルの臨界磁場を評価する予定である.
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Research Products
(2 results)