2017 Fiscal Year Annual Research Report
Durability diagnosis system for existing RC buildings considering deterioration factors
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17J09086
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中田 清史 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | セメント硬化体 / 中性化 / 炭酸化収縮 / 相組成変化 / 水分保持特性 / 力学的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
セメント系材料の炭酸化は、細孔溶液内のpH低下や炭酸カルシウムの生成に伴う空隙率の低下だけでなく、硬化体全体としての収縮を引き起こすことが知られている。近年の研究でこの炭酸化に伴う収縮がひび割れを生じ、セメント硬化体の物質移動抵抗性に影響を与えている可能性が示唆されている。炭酸化収縮を理解することは、上記のような炭酸化過程での物質移動抵抗性変化や炭酸化進行メカニズムを明らかにする一助となると考えられるが、その収縮性状やメカニズムに関する研究は少ない。本研究では、任意の乾燥度合い・炭酸化度合いにおける収縮量を取得すると共に、そのメカニズムについて炭酸化過程での水分保持特性変化に基づいて明らかにすることを目的として、円盤試験体を用いた実験を行った。実験の結果得られた知見を以下に示す。 1.CO2濃度5%、20℃、60%RH環境で炭酸化させた結果、炭酸化開始後いずれの調合も速やかに収縮を生じ、炭酸化90日時点での収縮量は炭酸化開始から0.6%以上となった。 2.水酸化カルシウムとその他の相の炭酸化は同程度の速さで進行するが、水酸化カルシウムの炭酸化は1~4日のうちに収束し5割程度が残存した。しかし、それ以降も炭酸カルシウム量が増加しており、その他の相(主にCSH)が炭酸化しているものと考えられる。 3.炭酸化に伴って体積含水率、比表面積は低下した。特に炭酸化後の比表面積については調合によらず炭酸カルシウム量と良い相関が見られ、細孔内に析出した炭酸カルシウムがセメント硬化体空隙の親水性表面を覆うことで上記の結果が得られているものと考えられる。 4.セメント硬化体の炭酸化は空隙内に炭酸カルシウムを生成することで、細孔内に保持される液水の量が低下する。これと同時に、空隙表面の親水性の低下や細孔溶液内のCaイオン濃度の変化が生じることで、炭酸化過程での収縮が生じているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭酸化収縮メカニズムを考察するには、任意の乾燥・炭酸化度合いにおける収縮量を取得することが望ましい。本研究では厚さ1mm程度の試験体を用いることで、試験体内で生じる乾燥・炭酸化度合いの偏りを限りなく小さくできているものと考えられ、炭酸化収縮の測定方法の確立に向けて一定の成果があったものと考えられるため。 また、29年度は上記の試験体を用いて炭酸化収縮性状を明らかにするとともに、炭酸カルシウム量の変化と水分保持特性の変化についても測定を行い、炭酸化メカニズムを硬化体内の水分量の観点から考察できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度の実験ではCO2濃度5%、20℃、60%RH環境において実施した。しかし、セメント硬化体あるいはセメント硬化体中の水和生成物の炭酸化性状は外部環境により異なるものと考えられる。今後は、実環境に近い環境で炭酸化収縮量を測定することを目的として、低CO2濃度、高湿度環境において実験を行う。 また、炭酸化収縮メカニズムを水分保持特性の観点から、より詳細に検討することを目的として、炭酸化した硬化体内で生じている体積変化駆動力の算出を行う。算出に当たっては、炭酸化過程での水分保持特性の変化だけでなく、相組成の変化やこれに伴う固相密度、弾性係数の変化を各種測定により明らかにする。
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Research Products
(5 results)