2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J09141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 貴史 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 散用状 / 庄園 / 東寺 / 庄未進 / 代官 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は東寺の散用状を検討対象として、(1)分析の前提となる散用状の収集と分類、(2)個別庄園で作成された散用状の分析、を主たる課題として研究を実施した。 (1)については、「東寺百合文書」『教王護国寺文書』「琵琶湖博物館収蔵東寺文書」「東京大学編纂所収蔵東寺文書」「旧京都府立総合資料館収蔵中世文書」に所収されている散用状を収集し、14世紀から16世紀にかけて東寺で作成された散用状1827件について、対象の庄園・寺院組織・法会名、作成日時、算勘日時、算勘を行った寺僧名・人数を表計算ソフトを用いてまとめた。但し、人名(花押比定)については全てを明らかにすることはできず、次年度の課題として残されている。 (2)については、播磨国矢野庄を対象に分析を加え、論文「年貢散用状の記載からみる「庄未進」の変遷 : 東寺領播磨国矢野庄を事例として」(『日本歴史』837号、2018年2月号)を発表した。同論文では、矢野庄の年貢散用状に計上される項目のひとつである「庄未進」の記載方式が14世紀後半に単年度額から累積額へと変化していることに注目して検討を行い、この記載が変更された要因として、同時期に発生した永和の嗷訴との関係を指摘するととともに、庄未進が累積額となることによって、その放棄を求める新しい要求が15世紀前半に在地社会から登場することを指摘した。 また、分析を重ねていく中で、上記論文で検討した時期以降にも代官の交代などに伴い矢野庄の散用状の形式が変化していることが明らかになった。この点については、史学会大会(発表題目:「年貢散用状の記載から見る庄園支配の変質:東寺領播磨国矢野庄を事例にして」2017年11月12日)や東寺文書研究会(「年貢散用状からみる庄園支配の変質:15世紀の東寺領播磨国矢野庄を事例として」)で口頭報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、分析の前提となる史料収集について、当初予定していた以上の史料を収集することができた。また、矢野庄の散用状に関する論文1本を成稿するとともに、学会で関連する報告を行うことができた。以上の研究状況に鑑み、本年度は上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は矢野庄の散用状に対する分析を中心に進めたが、収集した史料は矢野庄以外のものも多く含まれており、それらに対する分析は不足している。それゆえ、次年度は他の庄園や寺院組織の散用状に検討対象を広げて分析を進め、本年度に分析した矢野庄の散用状と比較しながら、東寺の会計制度の特質について考察を深めていきたい。
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Research Products
(3 results)