2018 Fiscal Year Annual Research Report
Physical Properties of Digital Media: How Technology Mediated Art is Objectified by an Audience
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17J09168
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
永田 康祐 東京藝術大学, 映像研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 写真論 / メディア研究 / ソフトウェア研究 / 現代写真 / 映像学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2点を研究指針とした。以下ではその2点に分けて実施状況を報告する。 1. 現代写真の実践とそれに類似する1970年代の芸術実践の比較を通じ、現代の多様化した作品の形態を歴史的に整理する 1970年代の写真をめぐる状況は、(1)コンセプチュアル・アートやランド・アートにおける非美的対象としての写真の利用、(2)写真を物理的に加工することによって立体化する写真彫刻の実践、の2つが挙げられる。このうち前者については多くの研究が行われる一方で、後者については十分な研究が行われていない。本研究では、この後者について、特に1970年にMoMAで行われた『Photography Into Sculpture』に注目し、同時代の批評や作品における実践との関係をリサーチした。 2. 周縁的な写真作品や写真に近接したメディア芸術一般を扱うための理論を構築する 昨年度より「装置」(ヴィレム・フルッサー)という側面から写真をとらえることによって、周縁的な写真実践をメディア論的な視点から扱ってきた。成果としては「絵画というハイブリッド」の発表が挙げられる。「絵画というハイブリッド」ではひとりのアーティストに絞って議論を行ったが、本年度は、写真制作に用いられるソフトウェアに注目し、デジタル処理をを伴う写真作品一般について分析し、論じた。「Photoshop以降の写真作品」はその成果である。また、2000年以降一般化したネットワーク監視カメラやAIカメラなどのスマートカメラについても、「写真可能なものの政治性」のなかで扱った。「写真可能なものの政治性」ではあくまでも単一の作品に限定して議論を行ったが、ソフトウェアにコントロールされた写真である「ノンヒューマン・フォトグラフィ」一般についてもリサーチを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時における本年度の研究予定は「アンケートを用いた作品記述の実験」や「Neural Talkを用いた画像キャプショニングシステムの構築」といった、おもに実験にかかわるものだった。しかし、技術的な問題や、昨年度のリサーチをより継続するため、これらの実験は翌年度に行うこととし、代わりに3年目に予定していた「作品制作を通じた検証」を行うこととした。 既往事例の分析にかんしては、研究実績の概要で述べたように、1. 現代写真の実践とそれに類似する1970年代の芸術実践の比較を通じ、現代の多様化した作品の形態を歴史的に整理する、2. 周縁的な写真作品や写真に近接したメディア芸術一般を扱うための理論を構築する、の2つの観点から進めた。 こうした変更はあったものの、成果の点からいえば、論文誌と批評紙など合わせて3つの原稿執筆、3つの展覧会への参加、3つのトークイベント登壇などを行った。これらのうち原稿執筆とトークイベントは昨年度から継続している既往事例分析に関するものであり、当初予定している程度の進展があった。また、展覧会への参加は、「作品制作を通じた検証」にかんするものであり、こちらは成果としては十分であるものの、検証の面においてさらなる分析が求められる。 以上のことから、本年度の研究進捗状況は、ある程度の進展はあるものの、予定より若干の遅れが認められている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず本年度の研究実績の概要にある「現代写真の実践とそれに類似する1970年代の芸術実践の比較を通じ、現代の多様化した作品の形態を歴史的に整理する」について、リサーチ内容を検討し、発表可能な形式にまとめ上げる。これは夏の研究会発表において草稿を発表し、秋に論文として提出することを予定する。また「周縁的な写真作品や写真に近接したメディア芸術一般を扱うための理論を構築する」についても、本年度行っていたコンピュータによる自動画像処理やそれにともなう「ノンヒューマン・フォトグラフィ」についてのリサーチを継続し、デジタルソフトウェアに依拠した写真を考えるための理論を構築する。こちらも並行して行い、秋から翌年の夏にかけて発表できるよう進める。 くわえて、「現在の進捗状況」で述べたように、本年度予定されていた「アンケートを用いた作品記述の実験」や「Neural Talkを用いた画像キャプショニングシステムの構築」についても来年度に行う必要がある。こちらは、現在進めているリサーチの結果から実験の内容を精査し、秋から冬にかけて実施する予定である。
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Research Products
(3 results)