2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J09232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 貴大 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 神経筋シナプス / 受容体型チロシンキナーゼ / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経筋シナプスは神経筋接合部(neuromuscular junction : NMJ)とも呼ばれ、骨格筋の構成単位である筋管(筋繊維)と運動神経の軸索末端(前シナプス)を連結する唯一のシナプスとして、骨格筋収縮、ひいては、呼吸・運動機能の制御に不可欠の役割を果たす。NMJの異常は易疲労性の筋力低下を特徴とする、遺伝性の先天性筋無力症候群や、自己免疫性の重症筋無力症の原因となる。また、筋萎縮性側索硬化症などの運動神経変性疾患や筋ジストロフィーにおいてもNMJ形成不全との関連が示されている。それゆえ、NMJ形成・維持機構の解明はこれらの神経・筋疾患の病態解明や診断・治療技術の開発にも結びつく重要な研究課題である。NMJの形成・維持は、筋特異的な受容体型チロシンキナーゼMuSKによって制御される。我々の研究グループは、MuSKの活性化とNMJの形成に必須な、筋内在性の細胞内タンパク質downstream of tyrosine kinases-7 (Dok-7)を同定し、その重要性を示してきた。事実、Dok-7を欠損したマウスはNMJを形成することができず、出生直後に呼吸不全により死亡する。しかしながら、Dok-7により活性化されたMuSKが駆動するNMJ形成シグナルの実体については不明な点が多い。そこで、本研究では、MuSK下流の、NMJの形成・維持・機能に重要な因子(NMJ制御因子)の同定とその作用機序の解明を目的とした。 当該年度においては、個体のNMJ形成・維持・機能に寄与する候補因子の選定、及び、これらの遺伝子欠損マウスの作出を目指し、研究を推進した。予定通り、NMJ形成・維持への寄与が示唆される因子群を選定することに成功し、その一部については、遺伝子欠損マウスの作出を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示す通り、NMJ形成・維持への寄与が示唆される因子群を選定し、その一部については、遺伝子欠損マウスの作出を進めている。さらに、未経験であった電気生理学的な機能の解析やNMJ超微細構造の解析に必要となる実験手技を習得した。これらの成果と手技により、次年度に計画した研究を着実に推進することができる。ゆえに当該年度の評価は上記の通りとする。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の遺伝子欠損マウスの作出を進め、当該マウスにおけるNMJの形態・機能の解析、および運動機能の解析を実施することにより、当該制御因子がNMJの形成・維持・機能に果たす役割を明らかにする。さらに、作出した遺伝子欠損マウスの表現型に応じて、培養筋管細胞や運動神経の初代培養系などを用いた解析の実施も検討する。また当該制御因子の作用機序を明らかにするため、その予想される機能とNMJの形成・維持や神経筋伝達との関連について解析を進める。当該制御因子の機能が不明である場合は、その因子と結合する分子を同定し、当該制御因子との結合がNMJ形成・維持・機能に果たす役割を追求する。
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